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スズキ、排出ガス・燃費試験に係る不適切な事案に係る調査指示に対する国土交通省への報告内容について その2
その1より続く。
3.背景と原因
(1)背景及びこれまでの経緯
2000年代に入り、各国の燃費規制が強化されてくるなか、スズキにとって燃費改善のための走行抵抗の低減は大きな課題となってきた。走行抵抗を低減するためには、車体や関係する装置毎にきめ細かな対策を講じる必要があり、これらの対策の効果を正確に把握する必要がある。また、車両としての燃費目標を設定するためには、車両の走行抵抗を気象条件に影響されずに安定してばらつき無く測定する方法が必要となってきた。
このため、スズキでは、2006年の風洞試験室の導入を皮切りにトランスミッション抵抗測定機、タイヤ転がり抵抗測定機、ブレーキ引きずり試験機、車両転がり抵抗測定シャーシなどの測定設備を整備した。また、これと並行して2008年頃から装置毎の抵抗の測定方法の開発を進め、2010年には装置毎等の積上げによる測定により標準大気状態における惰行法による走行抵抗値をある程度精度よく予測することが可能となった。
一方で、審査時に必要となる惰行法による走行抵抗申請値の測定については、燃費対策技術の進展により車体の軽量化や転がり抵抗の低減が進むにつれ測定精度向上が課題となっていたにもかかわらず、測定に必要な施設の整備や測定技術の向上のための努力を怠っていたという。
また、2010年当時は、リーマンショック後に再開した新車開発や軽自動車用新型エンジンの開発などへの対応のため、審査時に必要な惰行法の測定に十分な人員が配置出来ていなかったそうだ。
欧州向けのスイフトで、代表仕様の惰行法実測値を利用して、その他の仕様の走行抵抗値を装置毎等の積上げによる測定結果を用いて補正することが、スズキとして初めて認められた。このため、2010年6月に国内向けスイフトを申請する際には、欧州認証用に測定した装置毎等の積上げによる走行抵抗値が既に存在していたことから、国内申請用に必要な惰行法による測定をせず、装置毎等の積上げによる走行抵抗測定値を国内でも申請値として使用出来るとの誤解が生まれ、以降の新規開発車両にも踏襲されていったものと推測しているそうだ。
(2)規定が守られなかった理由
装置毎等の積上げにより測定された走行抵抗値が車両開発の段階で検証済みであると考えていたことと、惰行法による測定値はばらつきが大きく安定していなかったという要因があったことから、装置毎等の積上げにより測定された走行抵抗値を安易に申請用の走行抵抗値に流用していた。
今回の問題の根底にあるのは、法令に違反することの重大性に係る関係者の認識不足だという。
(3)申請値に係る不正な取扱いがこれまで発見、是正されなかった理由
走行抵抗値の決定は、申請値を決める重要な行為であるにもかかわらずこの承認手続きに係る社内規定が無く、また、他部門からのチェック体制も整備されていなかったことから、2010年のスイフト以降、前例踏襲によりカーライン及び四輪エンジン第二設計部の担当者の判断でこのような取扱いを継続的に行っていた。
4.燃費に影響なしとした根拠
装置毎等の積上げによる走行抵抗値は、量産部品を用いた実測値であり、車両開発の段階において量産部品相当の部品を組み付けた試作車において惰行法による検証も行っていることから、申請した数値自体は間違いの無いものと考えているそうだ。
また、社内調査による関係資料の確認及び関係者の聞き取り調査により、燃費を不正に操作しようとした意図はなかったことを確認しているという。
なお、14車種(OEM供給車種を含めると計26車種)の燃費最良車について、実際に惰行法により測定した走行抵抗値により燃費測定を行ったところ、全てカタログ表記の燃費値を上回っていることを社内試験にて確認しているそうだ。
5.再発防止対策
惰行法により測定した走行抵抗値を申請値として使用していなかったことが今回判明したことを重く受け止め、以下の再発防止を講じるという。
(1)技術者教育・研修の強化
今回の事案に係る再発防止策として最も重要なことは、コンプライアンス研修、法令知識に係る研修などの技術者教育の充実と考えるという。特に安全や環境に関わる技術基準については、各技術部門毎に必要な研修をきめ細かく設定し、それぞれに関係する部門の担当者の受講を必須化するそうだ。
(2)走行抵抗申請値決定に係る責任の明確化
今後は、車種毎に「申請燃費値及び走行抵抗値決定会議」を開催し、燃費値に対応する走行抵抗申請値を決定するとともに、四輪技術本部長が承認することとする。
(3)走行抵抗申請値に係る社内チェック体制の強化
今後は、法規認証部のチェック体制を強化し、惰行法によるデータの取得及び申請値としての使用を徹底していくそうだ。
(4)惰行法測定のための試験設備の整備及び測定技術の向上
相良テストコースへの防風壁の設置、走行路面の整備及びデータ取得のための試験装置の台数追加。また、安定して惰行法によるデータを取得するため、測定条件を詳細に管理するなど測定技術の向上と測定技能の習熟を図る。
(5)四輪技術本部における閉鎖的な体質の解消
今後は監査部門による監査に的確に対応するとともに、法規・認証部門などの関係部門との積極的な人事交流を行い、社内において開かれた組織とする。
(6)技術に関わる業務監査体制の強化
(7)内部通報制度の利用促進
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