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ツーリズム・デザイン・トレンド 北九州市にTOTOミュージアムが開館
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北九州市にTOTOミュージアムが開館
日々の人間生活において欠かせない食事とトイレ。なかでも生理的現象による排尿・排便行動は、健康面からしても怠れないものがあるだけに、大事な日常活動だ。その用足しをはじめ入浴関係の機器を扱う”水回りメーカーのTOTO”が、2017年の創業100周年を迎える記念事業となる「TOTOミュージアム」を、同社発祥の地である北九州市内にこのほど開館。”たかが便器、されど便器の世界”に触れて、日々の生活や健康維持にいかしたい。
*水回りの歴史と未来を担う
木造建築が当たり前だったかっての日本。当然トイレといえば、厠(かわや)と呼ばれた便所の床を開けた部分に垂れ流すのが一般的だった。これが明治時代に陶器製の便器が製造されても男性用小便器は別として、大きく膝を曲げてしゃがんで用をたす和風便器が今日でも残る。それが都市を中心に下水道が普及し、かつ腰掛けて使用できる洋風便器が普及するまでになり、ホテルやオフィスをはじめ一般家庭に至るまで、年々普及するまでになっていることも確か。腰掛け式便座にて、子どもから高齢者まで用足しも楽になっている。とはいえ現実にはまだまだ和風便器は多く現存しており、中国や東南アジアなどで多く残っている。これも将来下水道工事や水洗式が普及するに従い、いずれ腰掛け式に変わる時代も到来するであろう。
さてこれら便器をはじめとする手洗いや浴室関係の”水回り”機器を製造するTOTO株式会社(本社:福岡県北九州市、喜多村 円社長)が、同社の歴史や歴代の便器、最新モデルなどを展示する、「TOTOミュージアム」を本社内に8月28日オープンした。TOTOミュージアムは2017年に同社が創立100周年を迎える記念事業の一環として企画されたもので、従来から同所内にあるTOTO歴史資料館および、製品を紹介する北九州ショールーム。さらに同社社員や系列向けの研修センター、ホールなどを集約させた一体型施設となっている。新規オープンを機会に、創業の精神やものづくりへの想いとともに、時代ごとに新たらしい生活文化を創造・提案してきたTOTOの足取りと進化に向けた資料を紹介・展示をしている。しかもこの場所はかって創業地となった”小倉”にて、世界に向けたさらなるTOTOプロダクトとブランドを発信するランドマークとしての発展を目指す。
TOTOの創立は1917年(大正6年)、東洋陶器にはじまる。下水道がまだ整備されていない日本国内にあって、国民の健康で文化的な生活実現を願う創業者の大倉和親氏らによって設立された。当時の北九州といえば筑豊炭田や官営八幡製鐵所をはじめとする近代工業地帯として発展し、原材料の調達や労働力の面で役に立った。
前置きはこれくらいとしTOTOミュージアムの概要を紹介しよう。コンセプトは”緑豊かな大地”と”水滴”で、「人と地球の毎日に潤いをもたらす環境づくりにTOTOは貢献する」メッセージを表現している。建物規模は地上4階建ての本館部分と2階部分のドーム形建物から構成される。本館の外観は便器とか浴槽をイメージした、曲線的なカーブを描くデザインに。外観色は清潔感を表すホワイトを採用。本館は1階にホールと2階にミュージアムを備え、ドーム棟とつながる。
3&4階には研修施設が。片やドーム棟の1階にミュージアムの入り口と同社製品を紹介するショールームがひろがる。今回の開館によりミュージアムの規模も旧歴史資料館より約4倍の広さにショールームも1.4倍となっている。
*水回りの歴史に触れる
3つの展示コーナーから構成されるミュージアム。まず最初が創業時からのあゆみを紹介する展示室で、日本の近代化産業遺産などで認定遺産となった同社の水回り文化と製品を紹介。復元されて初代腰掛式水洗便器や、かって製造していた食器。初代ウオシュレットGなどが展示。さらにTOTOのルーツであり貿易業であった森村組と、その後多方面での森村グループ発展の足跡を紹介。さらに時代とともに変化してきた水回り製品の変遷やデザインなどを紹介している。いまでこそ世界に知られるTOTOであるが、その原点はセラミックス=陶器を素材に日常で多方面で利用され、かつ大量生産品となる分野を担ってきからにほかならない。その良い例が同社が扱う衛生陶器であり、同じ森村グループ企業が手がける自動車用スパークプラグ(日本特集陶業)や食器を扱う(ノリタケカンパニーリミテッド)など多岐に渡る。創業時の会社名となった東洋陶器も、当時の中心会社の日本陶器合名会社から派生したもの。
その後第2、第3展示室に移動するに従い、創業時の経営者の目指した想いや年代ごとの便器などを紹介。さらに1964年開催の前回東京オリンピックに合わせて開業した、ホテルニューオータニに納入された国内初のユニットバスルームや、赤坂離宮の迎賓館、国会議事堂などに設けられた大便器やビデ、浴槽などの実物も展示されている。そして日本の経済発展とTOTO製品の輸出増大に伴う、アメリカ、ヨーロッパ、中国など、仕向地向けごとで異なるデザインの便器・浴槽などの紹介もしている。なかでも忘れてならないのがトイレ利用の革命的製品となった、温水洗浄便座”ウォシュレットG”の登場である。1980年に最初のモデルが販売。またたく間に普及するまでになっており、とくに中国人旅行者などの爆買人気リストにもなっている。普段何気なく、そして一般化しているウォシュレットの呼び名。実はTOTOのしっかりした登録商標にて、同類他社製品はウォシュレット名を使えない。普段当然のように利用するトイレと便器だけども、備わる場所や地域などによって微妙に異なるデザインになっていることにも目を向けるとともに、家庭、職場、公共のトイレを問わず、お互い気持ちよく利用できる環境にしたいものである。
因みに施設の総工費は約60億円。施工の担当は鹿島建設。内装設計や展示エリアは展示分野で定評のある丹青社が手がけた。初年度(8月~来年3月末)の来館者は、約2万人を予定している。
取材 文/浜田拓郎
*所在地:802-8601
福岡県北九州市小倉北区中島2-
1-1(TOTO本社・小倉第一工
場内)
*TEL:093-951-2534
*開館時間:10:00~17:00(入館
時間は16:30まで)
*休館日:月曜日・年末年始・夏季休暇
*入館料:無料
*国道3号線ぞい(無料駐車場完備)
* HYPERLINK "http://www.toto.co.jp/museum/"http://www.toto.co.jp/museum/
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