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西川廣人CCOの自工会会長就任濃厚 日産自動車、パワー88最終年で 国内販売強化はどうなる?!

2015.10.21

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チーフ コンペティティブ オフィサーとして、世界販売台数増に辣腕を振るう西川CCO。世界レベルでの日産自動車の頑張りは、実績を見る限り十分評価できる状況にあると思う。
一方で、昨日も書いたが、国内販売では、中期目標のパワー88で掲げた「明確な2位」達成が容易ではない。明確な2位のターゲットであるホンダが、フィットやエアバッグの品質問題で揺れ、国内販売台数を落としているのに対して、日産も販売台数を伸ばせず、軽自動車を含む販売台数では、相変わらず仲良く「不明確な2位」争いを続けている。
実際、昨日も西川CCOは、記者の「明確な2位」達成は難しいのではないかとの問いに対して、「時間がかかる」と、目標未達を容認する発言を行っていた。
が、この発言はいかにも弱気。最近2年間、国内販売では新車投入が少なく、自ら転けてくれたライバルのホンダを追撃するチャンスをみすみす逃してしまった。これに対して、パワー88最終年の2016年度は、一転して新車攻勢をかける。
来年度上半期だけでも、ティアナ、セレナ、ノートHV、マーチと新型車を多数投入予定である。
普通なら、ショールーム改装も進んでいるし、女性を含めたセールス強化もやっている。サービスを中心とした顧客のくくり込みにより、固定客の流出も起きていない。来年度は反転攻勢に向けて手綱を締めると、決意の一端を語っても良さそうなものだ。
ライバルのホンダは、今年前半に行った新型車の大量投入の結果がはかばかしくない。逆に来年度は夏のフリードのフルチェンジが目を引くくらい。
西川さんが強気になれないのはなぜか?

記者が取材していて感じるのは、メーカーの考えに対する、販売店とユーザーの意識の乖離が見た目の数字以上に大きいことだ。
販売店は一度にたくさんの新型車はいらないから間断なく、商品強化をして欲しい。お客様の車検代替えのタイミングに合った受け皿としての商品が欲しい。それをやってくれてこそセールスマンはお客様に対して、強気の営業活動ができる。軽自動車との併売は、台数が成績に直結する営業マンにとっては、登録車を売らない理由になってしまう。

販売店の努力で、代替えしたいクルマがない日産車を、代替えせず車検を受けて乗り続けてくれている日産車ユーザーも同様だ。
新製品が出ないのはもちろん、クルマの企画が日本ユーザーのニーズを捉えきれていない。軽自動車を扱うのは良いのだが、スズキやダイハツのような、お客様の痒いところに手が届くドブ板営業をやったくれるわけでもない。
高額車を買いたいユーザーの目には、売り方もお店の雰囲気も、どこか中途半端に映る。
実際、日産の説明とは裏腹に、日産車から他のブランドに乗り換えているユーザーは多い。

新型車の大量投入が決まっている新年度を前にして、強気で鳴る西川CCOが、いまひとつ強気になれないでいるのは、お店とお客のこうした雰囲気を感じているからではないか。

もうひとつ。鳴り物入りでキャストされた国内販売担当の星野朝子専務の手腕も未だ未知数だ。販売店経営者の反応はいまひとつで、「クルマを知らない女性になにができるのか?」と陰口をたたかれている。
まあ、売れる商品が少ない現状では、致し方ないところだが、逆に言えば、新型車が多数投入される来年度は星野さんの真価が問われる一年となるのだろう。

星野さんの真価と言えば、見出しの話しが気になる。来年度から2年間は、日産自動車が自工会会長会社を務める順番。会長候補の筆頭はとりもなおさず西川CCOだ。元職の志賀さんとは昭和28年生まれの同い年。ゴーンCEOは昭和29年3月生まれだから、日本式に言えば、同じ学年。
若返りを図ると言って自工会会長任期満了後に志賀さんを同社副会長に棚上げしたゴーンCEOの頭の中を読めば、志賀さんと同い年の西川さんに対しても、そろそろ経営の一線から退かせたいと考えても不思議ではない。自工会会長就任はそのための絶好の「口実」とも言える。
少し前、記者の自工会会長就任の可能性についての質問に、西川さんは、「分からない」と話すのみだったが、周辺の情報によれば、ご本人はまんざらでもない様子だそうだ。
西川さんはゴーンCEOより歳上で、日産自動車社長の可能性は正直小さい。ならば、業界団体トップを2年間はる方が、先の楽しみもある。

西川さんが自工会会長に就任したとする。自工会会長の仕事は忙しい。志賀さん、豊田章男さんがそうであったように現職と自工会会長職の兼務の可能性もなくはないが、その場合でも日産自動車CCOとして活動する時間が制約を受けるのは間違いない。
中期経営計画、パワー88最終年の来年度。世界販売の最高指揮官が、物理的制約を受ける中で、星野朝子専務の国内販売反攻に向けた舵取りは、より一層難しくなる。
星野さんの仕事ぶりにクエスチョンがつくようだと、星野さん着任前まで、前面に出ていたアジア パシフィック 日本担当の片桐隆夫副社長の存在がクローズアップされてくるかもしれない。
いずれにしても、日産自動車の来年度「明確な2位」達成は、難しい局面にあると言って良いだろう。

取材 記事 神領貢 マガジンX編集長


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