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「2015年本田賞」ジョンズ・ホプキンス大学 ラッセル・テイラー博士が受賞  〜外科手術用医療用ロボット、システムの開発、技術進化に対する貢献〜

2015.9.29

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公益財団法人本田財団(設立者:本田宗一郎・弁二郎兄弟、理事長:石田寛人)は2015年の本田賞を医療用ロボットの開発および、この領域の技術進化や人材の輩出に大きく貢献したラッセル・テイラー(Russell H. Taylor)博士に授与することを決定した。

 

テイラー博士は、現在アメリカを代表する医学校の一つであるジョンズ・ホプキンス大学の教授および同大学のコンピュータ統合外科手術用システム技術工学研究センター(CISST ERC)、計算センシング・ロボティクス研究所(LCSR)の所長を務めており、今もなお医療用ロボット領域の技術進化および人材の育成に携わり、この分野のトップランナーとして活躍されている。

 

本年で36回目を迎える本田賞の授与式は、2015年11月17日に東京都の帝国ホテルで開催され、メダル、賞状とともに副賞として1,000万円がテイラー博士に贈呈される。

 

テイラー博士は、まだ医療用ロボットという分野が存在していなかった40年前から医療用ロボットの開発に携わり、この30年間は世界的なリーダーとしてこの分野を牽引してきた。

また、テイラー博士は1970年代にロボット研究のフィールドを作成した先駆者のひとりでもあり、この分野では最も高名な科学者の一人で、「医療用ロボット工学の父」として広く知られている。

 

テイラー博士がIBMのワトソン研究所の勤務時に中心となって開発した人工股関節置換手術支援ロボット「ROBODOC」のプロトタイプは、世界で初めて重要な外科手術プロセスを支援した医療用ロボット。ROBODOC用に開発されたコンセプトの多くは、その後さまざまな外科手術に使われるロボットシステムに採用された。同じころ、テイラー博士は頭蓋顎顔面手術のための外科手術支援システムの開発も主導した。このシステムは、脳神経外科分野以外で開発された最初の外科手術用ナビゲーションシステムの一つだ。

 

IBMに在職中、テイラー博士は腹腔鏡手術において、術野を常に術者が見る画面の中央に位置させる「腹腔鏡下手術支援ロボットシステム(LARS)」も開発した。従来の方法では、外科医は術野を直接見て操作する事ができず、内視鏡を操作する助手に頼らなければならなかった問題に対して、このシステムは手術器具の手元にジョイスティックを付け、それを操作して術野画面中の注目したい場所を指示すると、ロボット技術でコンピュータがカメラ位置を制御し、常に外科医が術野を見ることができるように解決したものだ。開発の際に、仮想孔中心機構(RCM)を取り入れることで機械的な安全性を実現し、この安全性のコンセプトは現在世界中に普及しているコンピュータ補助手術システム「da Vinci」に取り入れられている。

 

また、テイラー博士は「コンピュータ統合手術(CIS)」、「医用CAD/CAM」という概念をいち早く広め、医療用ロボット工学やCISに関する国際学会(医療ロボットとコンピュータ支援手術(MRCAS)、コンピュータ医用画像処理ならびにコンピュータ支援治療(MICCAI)、コンピュータ支援治療における情報処理(IPCAI)などを主催し、この分野を牽引している。

 

1980年に創設された本田賞は、人間環境と自然環境を調和させるエコテクノロジーを実現させ結果として「人間性あふれる文明の創造」に寄与した個人やグループの功績に対し、毎年1件の表彰を行っている。コンピュータ補助(ロボット)手術システムは、手術法に革命をもたらしました。同システムは低侵襲手術を可能にし、患者の苦痛を軽減することのみならず、入院期間の短縮、医療費の軽減を実現する。

 

このように、医療ロボットの適用拡大・進化は、国家の医療経済を有利にし健康で活動的な人を増大させ、結果として本田財団が目指す「人間性あふれる文明の創造」に寄与するものだと認めた。テイラー博士が開発した医療システムおよび医療ロボット分野の拡大と発展への貢献は本田賞にふさわしい成果であると考える。


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