News
改修進む渋谷駅
改修進む渋谷駅
*世界に知られた渋谷の玄関口は、パズルのような構造で乗り換えも一苦労
世界に知れ渡るスクランブル交差点で有名な東京・渋谷駅の大改造が進んでいる。東京都内の鉄道ターミナル駅にあって、唯一谷あいの地形にあるのが「渋谷駅」。かって童謡歌”春の小川”で知られた渋谷川界隈。両サイドに続く丘陵地の間を山手線が走る。1885年には当時の日本鉄道時代の渋谷駅が開業。これに東横線(1927年)や地下鉄銀座線(1938年)の開通・渋谷駅開業が続いて、一気に乗り換え機能と周辺繁華街が発展。今やその渋谷川は、駅付近の交通や歩行者の邪魔にならないよう、覆いが施されて目に触れない暗渠になっている。そしてここへ来て渋谷駅は大きな転換点に。増築と改築の歴史で複雑に入り込んだターミナル機能は、
今や”乗り換え不便なターミナル駅”となっている。加えて高層ビルの建設や街づくりの再開発で、その流れを変える大規模な工事が進んでいる。7月はじめその工事現場が報道陣に公開された。
渋谷駅を普段通い慣れた通勤・通学客にすれば問題ない乗り換えや日々の利用駅ながら日々で変わる駅構内の動線も、思わず迷ったりどのように進むべきか迷うことも。とにかく各路線ホームがあるのは地下5階から地上3階まで、複数の鉄道駅が織りなす構造となっている。具体的にはJR東日本の山手線と埼京線(地上2階)をはじめ、東急電鉄の東横線(地下5階)。されに東京メトロの銀座線(地上3階)と、階数・行き先ともに多様に分かれている。これにメトロ半蔵門線(地下3階)は田園都市線と、そしてメトロ副都心線(地下5階)は東横線と相互乗り入により、都心と郊外、横浜と埼玉県がつながるまでになっている。また西側には京王電鉄井の頭線(地上2階)ホームが建つ。
歴史とともにターミナル駅の機能を備えてきた渋谷駅ながら、各線の利用者増大に伴う増改築で複雑駅になっている。かって都電ターミナルだった駅前も、今やバスターミナルに。地上・地下を問わず毎日混雑が絶えない。しかも増大する外国人旅行者などにも支障となるので、オリンピック前後を見据えた大改造が急がれる。
工事の進行にとってネックになるのが渋谷川。当初は埋め立てや別ルートの地下水路の計画もアリな現代建設技術だが、そもそも自然に渋谷の地形を担ってきた河川だけに、狭いエリアの地形環境や大雨などの水防面での重要な役割となる渋谷川(下流で古川となり、東京湾に流れる)にて、現状の流れに沿った新ルートと改築工事となっている。
*渋谷川の上下部分に構築される、新たな地下ターミナル
工事現場は駅東口街区を担当する東急電鉄が渋谷川の改良を含めた開発を進める。梅雨真っ只中の取材。カメラ機材にヘルメットはじめ、レインコート、長靴の装備はすぐに汗まみれに。地上の騒々しさと異なり川は静かに流れる。ライトに照らされた暗渠。軽く半世紀以上は経過している思われる覆い部分の鉄骨とコンクリートが印象的。川面の一部にはネズミ取りも備わるも24時間工事中の現場では、ネズミもさぞかし周囲の繁華街に一時避難かも知れない。渋谷川の流れを一部変えることで、地下と地上部分の乗り換え施設の改善となるエレベーターやエスカレーター、階段を多く設けたり、東口地下広場の拡大など、利便性を向上させるとのこと。さらに地下に雨水貯水槽を設けることで、大雨時の水量調節や地下浸水の防止にも対応するなど、防災面にも配慮するとのこと。そして渋谷川と交差する部分には巨大な地下広場を設けて、東横・副都心線や田園都市・半蔵門線の乗り換え利便性を整える一方、地上部分に2019年度の開業を目指す、「渋谷駅街区・東棟」の地下施設と連絡する構造を実現するという。さらに現在は工事の進捗状況で路線ごとの停留所が微妙に移動する地上の都営バスなどのターミナルも、明治通りの車道ともど歩行者動線やバリアフリーの整備と安全対策が期待される。
*屋上展望スペースが備わる東棟
当時珍しかったプラネタリウムを備えた商業施設の渋谷文化会館は、今や高層の「渋谷ヒカリエ」(2012年開業/地上34階・地下4階)に変身。商業施設やイベントスペース、オフィスなどを構える複合高層ビルとして、今の渋谷エリアをリードする。その真向かいのバスターミナルで渋谷川の真上となるスペースに、新たに建設されるのが地上47階、地下7階、高さ約230mの複合施設ビルとなる「渋谷駅街区・東棟」が2019年度の完成を目指す。とくに今回紹介の渋谷川工事現場付近が大事な基礎部分と乗り換えエリアにて、日々の安全工事が求められる。この部分の工事母体は、東急グループの東急建設と”地図に残る工事”で知られる大成建設が担当。設計は日建設計はじめ、東急設計コンサルタント。デザイン面では隈研吾建築都市設計事務所などが担当している。
渋谷エリアでは最大高さとなる45~46階には、レストランなどを備える屋内展望施設が備わる予定。屋上部分の47階には芝生エリアや災害時のヘリポートなどを備えた屋外展望施設となり、四方の眺望が楽しめる構造を予定。なかでも46階と47階にはスリル感のある、エスカレーターと階段が備わるので、リアルな天候気分を味わえそうだ。
年配者にはよく知られた鉄道駅と直結の東横デパートも、山手線を跨いで東西館が永らく親しまれきた。それも順次再開発で見慣れた建物が失われつつある。建替えによる再開発で、東棟に並ぶ感じで山手線のある「中央棟」と西側バスターミナル部分に「西棟」が、今後2027年の完成に向けて建設されていくという。そのなかJR東日本は7月14日、
ホーム位置が異なり乗り換え不便のある、山手線と埼京線ホームの隣接化を2020年度の完成を目指す計画を発表した。現在の埼京線ホームを北側に350m移設して、山手線ホームと隣わせの構造に。併せて現在内回り・外回りホームが単独の山手線ホームを”島式”とするなど、街区開発の一翼を担う工事が開始される。さらに東京メトロの渋谷駅も、山手線上部の現在ホームから明治通り上部に移動するなど、渋谷駅東口エリアの風景がオリンピック時期に向けて大きく変化する。
浜田拓郎