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2016年度ETC義務化決定に現実味

2015.1.15

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今夏の最終答申に向け「賢く使う」基本方針案でる

 

2016年度ETC義務化決定に現実味

2018年度首都圏 起終点同一料金化

 

 本誌2月号でも書いたとおり、国が高度成長期に大量に作った社会インフラの更新と維持管理に注目が集まっている。道路関連で言えば、一般&高速道路、橋、トンネルなど。さらに公共施設、上下水道、港湾、ダムなどなど、老朽化インフラの対策は待ったなしだ。2050年頃には日本の総人口が1億人を割るのではないかと危惧されている状況で、国も女性の社会進出と子育ての両立により、人口減に歯止めをかけたいとの思いは強い。

 とくに地方での人工減少と少子高齢化は深刻だ。すでに地方の中核都市でさえ人口減少が始まっているが、その他の地方自治体では、市町村合併後も人工減少と少子高齢化に歯止めがかからない状況となっている。これに対して、国と地方自治体はまちの中心から離れたところに居住しているお年寄りや独居者を役所や病院、食料品店などから徒歩で通えるように転居を促したり、「道の駅」に代表されるように、そうした生活インフラを一カ所にまとめて、ネットワークで結ぶような構想を掲げ、実験を始めている。IT化によって高齢者の見守りに力を入れたり、食料品や金融の出張サービスを行っているところもある。ガソリンスタンドの減少にともなって、灯油に加え農機具用やマイカー用の燃料を出張補給するサービスも行われるようになった。

 これから始まる通常国会では、財政再建と福祉充実、地方創世、景気回復のあと押しなど山積する課題に対して、バランスの良い仕組み構築に向けた議論が求められる。政府にはしっかりと手綱を締めて直面する課題の解決に取組んでもらいたいものだ。2015年度の政府予算案が先頃発表されたが、総額は96兆円を超える。国の成長と財政再建にぜひ道筋をつけてほしい。

 少し前置きが長くなってしまったが、先述した道路関係インフラもそうした課題山積だけどお金がない、のまさしく渦中にある。自動車ユーザー、とくに個人ドライバーの視点では、新年度以降、エコカー減税も絞られ、軽自動車増税も決まり、踏んだり蹴ったりの中で「ユーザーの納めた税金をクルマ社会充実のために使ってほしい」と思うのが人情だが、旧道路他特定財源が廃止されたいま、自動車ユーザーは地方を支える有力な財源としての側面が強くなってしまった。都市部のユーザーはユーザーで、納税額を考えれば都市部の道路インフラ整備、更新と維持管理にもっとお金を使ってほしいとの気持ちが強いと思う。

 国は平成28年度に成案を得られるよう、道路インフラの「賢い」使い方の議論を続けている。2020年開催予定の東京オリンピック/パラリンピックを見据えて、道路標識の英国併記などインバウンド(来日外国人)旅行者が不便を感じないような移動手段の整備にも躍起になっている。公共交通はもちろんだが、道路分野でもとくに都市部での渋滞を減らし、東京圏の三環状を早期に開通させることで移動時間を短くする必要性が、国はもちろんのこと高速道路事業会社、関係自治体からも指摘されている。トラックユーザーからも、全日本トラック協会を先頭にして物流コストの引き下げに直結する通行料金下げ、渋滞解消を強く迫られている。オーナードライバーの団体を自認する天下り団体の日本自動車連盟(JAF)は、真に個人ユーザーの気持ちをなかなか代弁してくれないが、個人ユーザーもしっかり声を上げて「受益と負担」の大原則に則ったインフラ整備のあり方について「もの申す」ことが重要になる。

 1月15日に開催された今年最初の「社会資本整備審議会第18回国土幹線道路部会」では、高速道路を中心とした「道路を賢く使う取組」の基本方針(案)が議論された(左図参照)。いよいよ今夏の最終答申、2016年度からの法律改正が視野に入ってきた。この中ではとくに高速道路の人流、物流での役割強化のため、以下のような事柄を具体化すべく方針が盛り込まれている。

  • 目的地が同じなら経路が違っても同一料金とする。
  • 時間帯別料金の設定により都市部へのクルマの集中を回避して渋滞を減らす。
  • 通行量が増えているのに暫定2車線路を4車線路にできないところは、追い越し車線を増やすなど機動的に対応する。
  • 0の普及促進とETC義務化の検討。
  • リニア新幹線駅との接続など、地域とのアクセス機能強化。
  • 通行規制時間の短縮化、生活道路と幹線道路の機能分化。

などが盛り込まれる予定だ。一方で基本方針案にも書かれているが、人工減少と国土形成の整合性をどのように進め、国民の理解を得ていくのかについては、いま少ししっかりとした提案が見えていない。本当は高速道路をたくさん作りたいけど、お金もない、作っても利用されない可能性があるでは、高速道路の新設はおぼつかないだろう。

 地方の人たちからすれば、整備新幹線の開業前倒しや高速道路のミッシングリンク解消は悲願だろうが、それが本当に地域活性化に役立つのかどうか。「我田引水」で、とにかく高速道路が欲しい、新幹線がくればきっと人も来るといった淡い期待だけでは、「国破れて道路あり」の結末が見えてしまう。地方活性化は国土の健全な発展にとってはもちろん必要不可欠なことだが、移動インフラを地方に引き込むかぎりは、地方自身も自分たちの町の魅力を高め、都市部から人とモノが向かうような仕掛けを用意しなければならない。

道路が欲しいのか、道路工事が欲しいのか。道路が欲しいなら、その道路をどのように活用して町の活性化を果たすのか。そこまで議論を追い込まないと、移動インフラの新設にお金を負担する側の都市部の住民は納得しないだろう。未来の日本人にいまの借金のツケを払わせるにはそれなりの覚悟が必要だと思う。

 

取材・文・写真/神領 貢(本誌編集長)

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