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三菱自動車、特別調査委員会報告書の指摘と今後の対応について
三菱自動車の燃費不正問題に関して、この問題の重大性に鑑み、独立性のある外部有識者のみで構成される特別調査委員会を設置し、客観的かつ徹底的な調査をしてもらい、8月1日、三菱自動車は報告書を受け取った。3ヶ月という限られた期間の中でありながら、極めて広範囲な資料を精査し、154人にヒアリングし、精力的に調査してもらったという。
この不正に関し、三菱自動車が国土交通省に報告し公表した内容を検証の上、改めて事実を掘り下げたそうだ。軽自動車の燃費改ざんでは、数値の不正な操作が次第にエスカレートしていった実態が浮き彫りとなった。
原因・背景についても、大変厳しい指摘を受けたという。本質的な原因として、「自動車開発に対する理念の共有がなされず、全社一体となって取り組む姿勢が欠けていた」との指摘を受けたことを、三菱自動車工業取締役会長兼社長の益子修氏は自動車メーカーの経営者として深刻に受け止めているそうだ。
現時点から振り返れば、法規の定めと異なる走行抵抗の測定方法を使用する不正が始まった1991年は、三菱自動車が国内で販売拡大へアクセルを踏んだ時期。報告書では、翌年の新型車16類別発売を実現するために、手順省略を目的とした不正がシステム化されていったとされている。
さらに、三菱自動車はこの頃、販売台数のピークにあり、米豪に続いて欧州への生産拠点の設立に踏み切っている。開発現場への負担も大きくなる一方だった。度重なる経営危機に加え、市場環境の変化やリーマンショックを経験し、現在ではこの3拠点から撤退している。
また、ユーザーや社員からの反対があったものの、事業再生に取り組む中で車種・類別の削減に取り組み、「選択と集中」を段階的に進めてきた。しかし、今思えば、これも不十分であったと言わざるを得ないという。
報告書は、長年にわたり、ヒト・モノ・カネ全てのリソース不足に開発現場が苦しんでいたことを指摘している。益子修社長を含め歴代の経営陣は、現場の生の声にもっと向き合う努力をすべきだった、と後悔。
このようにこの問題の背景は、“身の丈を越えた”過大な車種展開であったと改めて認識しているそうだ。社内には本件問題を踏まえ、すでに変化の兆しも出てきており、開発部門からの提案を経営としても受け止め、公表している商品計画から、すでに1車種の開発中止を決定致したそうだ。
クルマの技術開発においては近年、予防安全や自動運転といった新しいIT技術の導入が進み、開発の難易度も上がっているという。厳しい環境の中にあるが、日産自動車との提携によるシナジー効果を最大限に活用して、開発計画の最適化を図り、三菱らしいクルマづくりに取り組んでいくそうだ。
再発防止策については、公表済みの23項目の再発防止策を、今後新設の事業構造改革室のリードの下、着実に実行していくという。関係者の処分についても、社内規定に基づき厳正に進めるそうだ。
三菱自動車は2000年以降、リコール問題を繰り返してきた。隠蔽体質やものの言えない雰囲気といった企業風土に係わる問題も、度々指摘されてきた。益子氏も2005年1月に社長に就任して以来、会社を変えるべく改革に取り組んで来たが、今回の問題により、取り組みが十分でなかったと認識しているそうだ。
三菱自動車としては、報告書の指摘を真摯に受け止め、ものづくり企業としての再出発を図いくという。社員、役員の全員がクルマづくりの原点に立ち返り、目指すべき理念についてしっかりと議論し、一体となって改革を実行していくそうだ。
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