スクープ

2002年4月


NBC-VIII
トヨタ
他社一人勝ちを許さないトヨタが作る
ヴィッツ派生ミニバンNBC-VIII
早くもデザイン確定か?と思いきや、じつは現行スパシオのテールをそのまま流用。三角形をモチーフにしたコンビランプとハイマウントストップランプが見分けるポイントだ。 フロントドアがスパシオ、リアのスライドドアがラウムから流用されているトヨタ版モビリオの先行開発車両。リアドアとホイールハウスの間が継ぎ足され、ホイールベースが延長されている。
 
他メーカーが開拓し、成功を収めてきた市場をトヨタが見過ごしたことはない。過去の例を見ても、エスクードにはRAV4を、ステップワゴンにはノアを、ステージアにはブリットをぶつけてきた。こんな経緯を元に、スクープ班は4月号でトヨタ版モビリオを大胆にも予想。一部で「安直な推測だなぁ」といった声も聞かれたが、ついにその存在をキャッチし、改めてスクープ班の第六感の鋭さを証明することになった。

写真はトヨタ社内で製作され、諸テストに用いられている先行開発車両だ。周知のとおり、トヨタは派生車を作る場合、まずベースとなるクルマを改造して基本的なテストを始め、ある程度のレベルに達してからモノホン・ボディを採用して本格的な試作車を製作。もちろん、先行開発車両でのテストが行われている間に、内外装デザインが煮詰められているのだ。過去のスクープを振り返っても、スターレットから始まったRAV4や、カルディナのかさ上げ版から始まったイプサムが思い出される。

本誌が予想したように、トヨタ版モビリオはヴィッツのコンポーネンツを用いて開発されている。そのため、社内では「NBC-VIII」と呼ばれており、ヴィッツ・ファミリーの一員に数えられている。言うまでもなく、コンパクト・ボディに3列シートが設けられ、リアにはスライドドアを採用。いまのところ、搭載エンジンは1・3リットルと1・5リットルの2タイプが検討されているようだ。

厳重な擬装でわかりにくいが、この先行試作車両はラウムとスパシオ、それにヴィッツをつなぎ合わせたツギハギだらけのクルマだ。スクープ班が分析したところ、フロントドアとボディ後端はスパシオ、横のスライドドアは前後方向に伸ばされた上でラウムから流用されていることがわかった。また、インテリアにはヴィッツのパーツが使われており、センターメーター採用のインパネもそっくりそのまま移植されている。

足まわりではフロント・サスペンションがヴィッツと同じストラット式、リア・サスペンションがスパシオと同じトーションビーム式になる可能性が高い。これは暫定的に用いられているボディから予想したものだが、最近のトヨタFF車の足まわり設定はこの組み合わせが多く、トヨタ版モビリオも同じ設定になると考えて間違いないだろう。

さらに驚かされるのが発売時期だ。トヨタはこのモビリオ・キラーを03年初夏にも発売する計画だというが、開発期間は丸2年に満たないとの情報もある。1台のクルマを24カ月以下で仕上げてしまう超・短期開発作戦は、数多くの流用可能なコンポーネンツと多彩なマンパワーを有するトヨタならでは。当然、品質も申し分ないレベルが確保され、幅広いユーザー層の支持を得るにちがいない。あと1年たらずで姿を現すトヨタ版モビリオが、本家モビリオを駆逐できるかどうか、大いに見モノだね。

 
フロントノーズも既存のパーツを使って暫定的に製作されている。バンパーやグリルは省かれており、走るのに必要な最低限の部品のみを装着。トヨタ試作車でおなじみの黄色いネットも。

こんなツギハギから始まるトヨタの“超お手軽開発”手法
インパネはヴィッツから流用。センターメーターやダイヤル式ヒーターコントロールパネル、丸型エアベントも見える。 リアセクションはラウムとスパシオが点線部分で組み合わされ、両車のサスペンションタワーもそのまま残っている。 バックドアは内張りも含め、スパシオのものが使われている。もちろん、コンビランプのハウジングも流用パーツだ。