他メーカーが開拓し、成功を収めてきた市場をトヨタが見過ごしたことはない。過去の例を見ても、エスクードにはRAV4を、ステップワゴンにはノアを、ステージアにはブリットをぶつけてきた。こんな経緯を元に、スクープ班は4月号でトヨタ版モビリオを大胆にも予想。一部で「安直な推測だなぁ」といった声も聞かれたが、ついにその存在をキャッチし、改めてスクープ班の第六感の鋭さを証明することになった。
写真はトヨタ社内で製作され、諸テストに用いられている先行開発車両だ。周知のとおり、トヨタは派生車を作る場合、まずベースとなるクルマを改造して基本的なテストを始め、ある程度のレベルに達してからモノホン・ボディを採用して本格的な試作車を製作。もちろん、先行開発車両でのテストが行われている間に、内外装デザインが煮詰められているのだ。過去のスクープを振り返っても、スターレットから始まったRAV4や、カルディナのかさ上げ版から始まったイプサムが思い出される。
本誌が予想したように、トヨタ版モビリオはヴィッツのコンポーネンツを用いて開発されている。そのため、社内では「NBC-VIII」と呼ばれており、ヴィッツ・ファミリーの一員に数えられている。言うまでもなく、コンパクト・ボディに3列シートが設けられ、リアにはスライドドアを採用。いまのところ、搭載エンジンは1・3リットルと1・5リットルの2タイプが検討されているようだ。
厳重な擬装でわかりにくいが、この先行試作車両はラウムとスパシオ、それにヴィッツをつなぎ合わせたツギハギだらけのクルマだ。スクープ班が分析したところ、フロントドアとボディ後端はスパシオ、横のスライドドアは前後方向に伸ばされた上でラウムから流用されていることがわかった。また、インテリアにはヴィッツのパーツが使われており、センターメーター採用のインパネもそっくりそのまま移植されている。
足まわりではフロント・サスペンションがヴィッツと同じストラット式、リア・サスペンションがスパシオと同じトーションビーム式になる可能性が高い。これは暫定的に用いられているボディから予想したものだが、最近のトヨタFF車の足まわり設定はこの組み合わせが多く、トヨタ版モビリオも同じ設定になると考えて間違いないだろう。
さらに驚かされるのが発売時期だ。トヨタはこのモビリオ・キラーを03年初夏にも発売する計画だというが、開発期間は丸2年に満たないとの情報もある。1台のクルマを24カ月以下で仕上げてしまう超・短期開発作戦は、数多くの流用可能なコンポーネンツと多彩なマンパワーを有するトヨタならでは。当然、品質も申し分ないレベルが確保され、幅広いユーザー層の支持を得るにちがいない。あと1年たらずで姿を現すトヨタ版モビリオが、本家モビリオを駆逐できるかどうか、大いに見モノだね。
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