スクープ
2004年 2月

MDX Jr. ホンダ
「打倒ハリアー」の夢叶えるホンダ
2.2リットルターボエンジン搭載 めざすは「峠でも速いSUV」

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デザイン検討が進むMDX Jr.の予想フォルム。スラントしたノーズには5角形グリルと薄型ヘッドランプが備わり、シャープなマスクが作り出される。大胆なフェンダー形状にも注目。

 カナダ工場で生産され、日本でも03年2月から販売がスタートしたホンダのSUVがMDXだ。スクープ班はそのMDXの下に位置し、「打倒ハリアー」の役割を果たすMDXジュニア(仮称)の存在を新たにキャッチした。

 キーワードは「峠でも速いSUV」。3代目オデッセイのようにキャビンを低くして重心を落とし、運動性能を大幅に高めるほか、驚いたことに新開発の2.2リットルターボエンジンもラインナップされる。ホンダが軽自動車以外でターボエンジンを設定するのは、じつに初代レジェンドの可変ウイングターボ以来のこと。ターボは本来、スロットル踏み込みから過給圧がかかるまで時間差があり、峠道などを気持ちよく走るのは苦手だが、ホンダが最新技術で出力特性やターボラグをどのように改善してくるか、要注目だ。

 ボディデザインは見てのとおり、キャビンの低さと車高の高さを絶妙にマッチさせた造形。スリーサイズはMDX(4790mm×1955mm×1820mm)よりも若干小さく、4700mm×1850mm×1680mm前後と、ハリアー並みになる。タイヤサイズは225/55R17。デザインコンセプトは2クラス下のHR-Vを思わせるが、全体的に丸みを帯びた点が新しさと洗練された印象を演出している。フロントグリルにはアキュラ・ブランド共通の5角形タイプを採用、その両横にはオーソドックスな異型ヘッドランプが埋め込まれる。

 一方のリアビューでは、流行りのSUVやミニバンのようにコンビランプをDピラーに埋め込むような手法は使わず、ボディ側からハッチゲートへと続く横長のランプを採用。左右2本出しのエキゾーストも印象的だ。また、スポーティイメージを強調するため、日産ムラーノに似たダイナミックなフェンダー形状も採用されるとか。

 シャシーなどの基本コンポーネンツはアコードから流用されるため、ホイールベースはアコードと同じ2670mmになりそうだ。しかし、先に述べたとおり、エンジンは新規に開発中。排気量2.2リットルで、K22A型のネーミングが与えられる。ターボのほかにNA(自然吸気)も設定され、両エンジンとも組み合わせるトランスミッションは5速ATだ。

 新規開発モノとしては、エンジンのほかに4WDシステムが挙げられる。兄貴分のMDXには、路面の状況に応じて駆動力を前後100:0から50:50まで自動配分するVTM・4(バリアブル・トルク・マネージメント4WD)が使われている。このシステムは良くできている半面、サプライヤーがアメリカのメーカーということもあり、コストや重量などの面で下級モデルに全面採用するのは難しい模様。このため、ターボモデルにはVTM・4の自社開発版を搭載。さらに、NAモデルにはコストと重量の削減を狙い、デュアルポンプ式リアルタイム4WDが用いられる予定だ。

 開発は順調に進んでおり、エンジンはハイパフォーマンスぶりを予感させるかのように、アコード・ユーロRに積まれてテスト中。このほか、シャシーテストはアコードワゴン、VTM・4の開発&テストはMDXを用いて行われている。

 このMDXジュニアは、早ければ05年1月のデトロイトショーで世界初公開となる見通し。北米市場では同年9月にターボモデルが先行発売され、NAモデルは1年遅れの06年9月に登場するという。通常のマーケティング手法だと、MCや車種追加のタイミングで高出力版を投入するのが一般的だが、ホンダはまずターボモデルから投入する戦術に出る。ホンダを含め、日系メーカー各社は北米でSUVやピックアップ分野で攻勢をかけており、その勢いが常識をくつがえす投入手法にも反映されているのだろう。年間販売目標はターボ、NAとも1万6500台ずつ、合計3万3000台だ。

 マーケティング的には兄貴分と同じく、北米市場がメインターゲットに据えられる。現地生産される可能性が高いものの、日本国内では高級グレードのみで勝負したMDXが幅広いグレードを持つハリアーの対抗車になりきれなかったことから、SUV分野のテコ入れを狙って国内にも投入されるかもしれない。ただ、これまで述べてきたように、MDXジュニアは兄貴分よりスポーティ指数が高く、競合車とは違った顧客層の獲得に乗り出すとも考えられる。

 国内では、ここ数年好調だった新車販売に陰りが見え、なんとか新型オデッセイで息をついている状態だが、北米では依然として絶好調のホンダ。福井社長は最近の新聞インタビューで「日本市場で強くなければ北米での競争力は保てない」と語り、国内販売に力を入れる方針を明らかにした。新型オデッセイで切り開いた“走り”の新境地と、ブランド力の高い北米生産車という2枚看板引っ提げて登場するMDXジュニアに期待だ。
05年9月デビューに続いて1年後にはNAモデルも追加

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後ろ姿はアコード・ワゴンに似ており、横長コンビランプと両出しエキゾーストがワイド感を演出。4WD機構はターボとNAで異なり、それぞれの動力性能に見合ったシステムが与えられる。

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コンピューター制御により、前後トルク配分が100:0〜50:50まで自動的に変わるVTM-4(バリアブル・トルク・マネージメント4WD)はMDXに初搭載された。今回スクープしたMDX Jr.では改良版が用いられる。

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MDX
03年2月から輸入販売が始まったホンダ初のプレミアムSUV。大きすぎるサイズと高額な価格設定により、国内では苦戦している。
国内で倒したいライバル2車
ハリアー

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ムラーノ

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MDX Jr.と競合する代表的な国産車がハリアーだ。高級サルーンとSUVのクロスオーバーとして開発され、新たなジャンルを築き上げた、まさに先駆者的存在。初夏にはスペシャリティカー並みの動力性能を身につけたハイブリッド仕様が加わる予定だ。一方、日産もムラーノを北米で先行発売しており、今秋から国内での販売を始める。モビリオを最初に送り出した構図とは逆、この市場ではホンダが後発組となるワケだ。
ユーロR“ターボ搭載”説はウソ!?

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テストコースではエアスクープのついたアコード・ユーロRが走っているらしい。
一部で報じられているアコード・ユーロRへのターボエンジン搭載説について、ある関係者は次のように話す。「確かにテストコースではボンネットフードにエアスクープのついたユーロRが走ってますが、あれはMDX Jr.に載せるターボエンジンの開発に使われている試験車両ですよ。それを目撃して『ユーロRにターボが載る』と思い込んだんじゃないですか。そもそも、性能に耐えられるMTがないため、当分の間ユーロRへのターボ搭載はないはずです」と。ただし「(2.2リットル)NAエンジンのほうはユーロRにも展開される予定ですよ」といった期待感の高まるコメントが得られたことも忘れずに報じておこう。


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