2004年 5月
マークII
トヨタ
独占公開 新型マークII 6ツ目の確定フォルム
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現行モデル
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4月号で報じたように、片側3連の個性的なヘッドランプが備わる新型マークII。ボリュームあるフェンダー造型をはじめ、躍動感あふれるクルマに生まれ変わるのが確認できるだろう。
80年代前半からバブル経済が弾ける90年代はじめまでの「ハイソカー・ブーム」の主役として、わが世の春を謳歌したマークII。白いグランデに乗ることがステータスだった当時はコンスタントに月販1万台以上をキープしていたが、いまや3000台ペースに落ち、ティアナに迫られる始末だ。既報のとおり、新型モデルは販売台数拡大とともに、希薄になったブランドイメージの再構築も狙って大幅な変貌を遂げる。
とくにスタイリングは従来のマークIIのイメージを打ち破る大胆なもの。4月号で6ツ目マスクの第一報、そして6月号でサイドビューを掲載したが、今回再現した前後の確定フォルムで改めてそのデザインに驚かされる。フロントには既報の6ツ目ランプが配されるほか、ボンネット中央からラジエターグリル、そしてバンパーへと続くダイナミックなキャラクターラインが、まるで肉食獣を思わせるほどの迫力を演出。また、フロントバンパーの両サイドには横長のエアインテークが設けられ、その間にナンバープレートが置かれる。個性的なマスクは廃止されたヴェロッサのDNAも引き継いでいるようにも見える。
全幅は現行モデルより10mm広がって1770mmに拡大されるが、フェンダーパネルの膨らみ具合は現行モデルとは比べものにならないほど迫力がある。これは、モデリングの段階で削るところをしっかりと削り、メリハリを強調して張りを持たせた結果だろう。
これに対し、全長は現行モデルより40mm短くなって4695mmに縮小。クラウンとのサイズ差を拡大することで明確に差別化を図るとともに、走行性能の大幅な向上に結びつけるのが狙いだ。この全長は事実上5ナンバー枠のサイズで、大ヒットした70系や80系の2mm主力モデルと同じ寸法にまで戻されることを意味する。
現行クラウンと同じ新世代V6エンジンが搭載されることでフロントノーズは縮まり、逆にホイールベースは70mmも延長されてキャビンスペースは拡大。前後席のヒップポイント間隔も45mm広がって955mmに達するほどだ。当然、開発陣も意識しただろうが、FF方式のティアナに引けを取らない室内空間を確保するに違いない。にもかかわらず最小回転半径は5.3mに据え置かれ、FRならではの取り回しやすさが受け継がれる。
ビックリはまだまだ続く。新たに再現したリアビューにもナント、6ツ目ランプが採用されることが判明したのだ。日産が現行スカイライン・セダンで丸型テールランプを廃したのとは対照的に、トヨタはここ数年、丸型ランプを積極的に用いている。アルテッツァに始まり、クラウン・アスリートへと続いているこのトレンドは今後も広がっていきそうだ。新型マークIIではハウジング内にテール&ストップランプ、ターンシグナル、バックアップランプが配され、ヘッドランプと統一されたモチーフにデザインされているのが印象的だ。
もうひとつ、後ろ姿で特徴的なのが張り出し量が大きく、フロントに負けない踏ん張り感のあるフェンダーだ。全長が短縮されることから、相対的にワイド感が強調される。また、トランクリッドには新型マジェスタ同様、厚みが与えられてボリュームあるリアビューが作り出されるようだ。もちろん、リッドはバンパー上から開くため、使い勝手の面でも優れている。
搭載エンジンは3GR型3リットルV6と4GR型2.5リットルの2機種で、現行クラウンと同じラインナップとなる。この新開発GR型ユニットは3リットル、2.5リットルともにパワフルさでは定評のあるエンジンだ。直6のJZ型に比べてパワー、燃費、環境性能すべてが向上しており、21世紀サルーンにふさわしいエンジンと言っても過言ではないだろう。新型マークIIはダウンサイジングされて車重がクラウンより軽くなるだけに、そのパワフルさには大いに期待できる。現行2.5リットルターボと比べて爆発的な迫力こそ望むべくもないが、3リットルであればレスポンスや回転フィールまで含めたトータル性能で大きな不満を感じることは少ないはず。
トランスミッションについては、クラウンでは6速ATが3リットルのみに搭載されているが、新型マークIIでは2.5リットルFRにも拡大採用されるようだ。ただし、4WDは5速ATとなる。
価格に関する情報は現在も収集中だが、廉価グレードは思い切った低価格を打ち出すことが予想される。現行モデルの最量販グレードは車両本体価格235万円の2リットルグランデだが、2.5リットルにエンジン排気量が拡大されるとはいえ、価格を大きく引き上げると保有母体からの代替えを逃しかねないからだ。さらに、ティアナの売れ筋が車両本体価格225万〜240万円の2.3リットルモデルであることも、戦略的な価格設定が行われる一因だ。
すでに4月には型式申請に用いられる性能確認車が組み付けられ、6月中旬からは最終仕上げに使われる総合確認車が製作される。その後、7月下旬から8月にかけて量産試作が生産ラインを流れて生産性の最終チェックが行われ、いよいよ10月上旬から量産が始まる。なお、生産は関東自動車工業の岩手工場が担当する模様だ。
かつて「時代のクルマ」として幅広い年齢層の支持を集めたマークII。現在では購入者の多くがマークIIから代替えする中高年ユーザーとなってしまい、コンセプトを大幅に刷新しない限り、かつてのコロナやカローラと同様に販売面でジリ貧に追い込まれるのは目に見えている。そんな中、このクラスのセダンが活路を見出すには走りの良さがカギになるだろう。また、高い質感も欠かせない。この2点を磨き上げ、新型モデルはマークIIと呼ぶには惜しいほどの変身を遂げて10月にデビューを果たす。
マークIIと呼ぶには惜しいほどの変貌ぶり
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ヘッドランプ同様、リアにも3連コンビランプが採用されることが新たにわかった。トランクリッドは新マジェスタと同じく、厚みのあるデザインに仕立てられて存在感あるリアビューを演出。
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6月号に掲載したサイドビュー。シルエットはオーソドックスだが、ダイナミックなデザインが盛り込まれる。
クラウンから流用される搭載エンジンは3GR型3リットルV6と4GR型2.5リットルV6の2タイプ。ともに6速ATが組み合わされる。
新型マークIIとライバル車の寸法比較(編集部予想)
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70系から始まったギミック装備のオンパレード
70系
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クイックハンドウォーマー
左右調節式
リアヘッドレスト
80系
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スライドアウト
エアコンパネル
ワンタッチ格納式
リアヘッドレスト
サイドワイパー
90系
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トランクリッド
置きハイマウント
ストップランプ
ハイソカー・ブームの波に乗ってマークIIの知名度を大幅に高めた5代目(70系)。この世代では着座位置に合わせて調整できた左右調節式リアヘッドレストや、ドライバーの手元に温風を吹き出すクイックハンドウォーマーといった変わりダネ装備が初めて採用された。続く6代目(80系)では後方視界の確保に役立ったワンタッチ格納式リアヘッドレストや不要なスイッチ類が隠せたスライドアウトエアコンパネル、雨天時にドアミラーを見やすくしたサイドワイパーを設定。その後、バブル経済が終わってギミック装備は減ったものの、7代目(90系)にはトランクリッド置きのハイマウントストップランプがオプションで用意された。まだ当時はリアワイパーとハイマウントストップランプを両立させる名案がなく、ワイパーを左右どちらかにオフセットする発想もなかったようだ。
はみ出し情報
国内向け現行レジェンドは4月末で生産終了。新型モデルは7月に北米向けが、9月に国内向けがそれぞれ生産開始となる。予定価格は470万円とのウワサも。エリシオン・ハイブリッドは開発凍結か。
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