スクープ
2004年11月

 カローラ派生車  トヨタ
 05年東京モーターショーでトヨタがお披露目するカローラ派生車はでっかいbB

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デザイン検討が進むカローラ派生車はbB似のスクエア・フォルムを持ち、アメリカン・レトロな雰囲気がかもし出される。横一直線のランプ類がフロントマスクを印象づけている。

 コンパクトで手頃なbBじゃモノ足りないキミに朗報!トヨタが新たな“箱”投入に向けて動き始めた。―プラットフォーム一新と同時に世界標準サイズへと成長する次期カローラは06年8月にデビューが予定されている。04年12月号で報じたように、次期モデルには国内向け5ナンバー幅と輸出向け3ナンバー幅の2種類のセダンに加えてHB、フィールダー(ワゴン)もラインナップされ、引き続きワイド・バリエーションが構成される。HBはグッと精悍さが増してヨーロッパ勢に引けを取らないカッコよさを身につけるとともに、インテリアにもスポーティ・テイストが盛り込まれて若返りが図られるのも既報のとおりだ。その後の調査でHBとフィールダーも全幅1700mm超えの3ナンバー幅に拡幅されることがわかった。

 しかし、これだけにとどまらない。スクープ班は「次期カローラに全く新しい派生モデルが用意されている」との情報を入手して以来、その存在を追いかけてきた。調査を通して断片的に得られた情報を組み立てた結果が、冒頭で述べた“箱”だ。ナント、計画されているクルマは新ジャンルのMPW(マルチ・パーパス・ワゴン)であることが判明した。

 そのデザインは上のイラストで再現したとおり。何とも奇抜で思い切った造型だが、ひと言で表現するなら「でっかいbB」とでも呼ぶべきか。さほどスラントしていないノーズ先端には横一直線のヘッドランプおよびガーニッシュが配され、bBに似た表情が作り出されている。また、下方のバンパーにも同じ横線基調をモチーフにした角丸のエアインテークが内蔵され、リズミカルにまとめられる。

 bB似の雰囲気はとくにAピラーから後方に感じられる。もちろん、切り立ったAピラーそのものもbBゆずりのデザイン要素だが、水平基調のルーフとウエストラインがシンプルさを強調。サイドウインドウのタンブル(絞り込み)が弱く、室内の広々感が確保されるのもチェックしておきたい。

 そして、エクステリア最大のポイントとして注目を集めそうなのがグリーンハウスの低さ(正確には“低く見える”グリーンハウス)だ。フロントウインドウより上下幅が狭く、あたかもチョップドルーフ採用の改造車に見えるほど、低いイメージが演出される。当然、見せかけのデザインなので、実際の乗降性やヘッドクリアランスは市販車にふさわしいレベルを確保。

 具体的には乗り降りの際に頭をぶつけないよう、ドア開口線はウインドウ上端よりもかなり高い位置に設けられる。所帯じみた印象にならないよう、スライドドアは採用されずにオーソドックスなヒンジドアに落ち着く予定だ。一方、ルーフにはボディサイドまで回り込む造型が用いられてアメリカン・レトロなテイストがかもし出される。その“ワルさ加減”がbBの比じゃないのは見てのとおり、多くを語るまでもない。

 ただ、個性的なデザインと引き替えに開放感が損なわれるのはボクらユーザーにとって、あまり歓迎できることではない。そのためにもルーフ中央には縦長のガラス部分が設けられ、頭上から光が差し込むよう、配慮されている。こういった気配りはトヨタならでは。

 上下幅の狭いサイドウインドウはリアクォーター部分を経て、そのままハッチゲートへとつながる。ウインドウ下にはヘッドランプと呼応する横一直線のコンビランプ&ガーニッシュを配置。さらに、ハッチゲート下部にはバンパーとツライチに見えるスムージング処理も施される可能性が高い。

 最初に触れたとおり、ベースとなる次期カローラの3ナンバー化にともない、このMPWも全幅1700mmを超えるワイドボディを持つ。しかし、シート配列は3列ではなく、贅沢にも2列にとどまって過剰なほどの居住空間がもたらされる。これは2代にわたってコンパクト・ボディに3列シートを押し込んだものの、販売面で大成功に至らなかったスパシオの反省も反映されているのかもしれない。

 3列シート採用が見送られる代わりに広大なラゲッジスペースが用意されるのは言うまでもない。床下には洗車用具や汚れたモノを収納するのに便利な樹脂ボックスが、床面とサイドトリムにはロープフックが設けられて実用性も保たれる。何でも積み込める大容量スペースはボディボードやバーベキュー、フリマ出品など、若者のあらゆるライフスタイルで活躍してくれそうだ。

 ボディの大型化にともない、MPWを含む次期カローラ系のエンジン・ラインナップは1.8リットル級がメインに位置づけられる(現行モデルは1.5リットルが主力)。おそらく現行1ZZ型の改良版が起用され、パワーと燃費・環境性能の両立が図られるだろう。さらに驚きなのが2リットルを超える新エンジンの設定だ。いまのところ、エスティマやカムリに搭載されている2AZ型2.4リットルをベースにボアアップが図られ、排気量が100cc大きい2.5リットルに拡大されたうえで載せられる公算が高い。ちなみに、最高出力は210ps前後に達するとの情報もある。

 衝撃的なニュースはまだまだ続く。この2.5リットルエンジンには約250psのターボ仕様も用意されるという。今回スクープしたMPWに搭載されるかどうかは未定だが、レガシィやカルディナをライバル視したスポーツ4WD用に開発されている模様だ。

 装備面でも最近のトヨタ車で急速に普及が進められているアイテムが揃うだろう。スマートキーを携帯しているだけでドアロック解除やエンジン始動が行えるスマートエントリー&スタート、スポーティなプッシュ式スタートボタン、通信によって常に最新情報が得られるG・BOOK対応ボイスナビ、後退時に重宝するバックモニターなど、同クラスのクルマを凌駕。また、外観のワルな雰囲気に合わせ、インテリアにも天井イルミネーションやドアポケット照明、カップホルダー照明といったランプ類が随所に装備される。

 商品ラインナップ内でのポジショニングについても興味深い話が浮上している。トヨタ社内ではこのMPWをbB後継車に位置づけたい考えもあるようだ。既報のとおり、bBは次期ファンカーゴ(05年7月デビュー)に吸収されて実質1代限りで消滅してしまう。しかし、北米で展開が始まった若者向けチャンネルのサイオンで販売されている以上、そう簡単にモデル廃止にしてしまうワケにもいかないはず。北米現地から「現行モデルはパワー不足だ。もっとパワーを!」といった要望がフィードバックされていることも考え合わせると、ますます「MPWがbB後継車ではないか?」との思いも強まる。

 となると、やはり国内での販売チャンネルは若者をターゲットに定めているネッツ店が有力か。かたや「トヨタ店向けにカローラ派生車が開発されている」とのウワサもあるが、掲載したMPWがトヨタ店のショールームに並ぶとは考えにくい。別の派生車が用意されているのか、単に情報が錯綜しているだけなのか、はたまたメーカー内で結論が出されていないのか・・・。このあたりは引き続きスクープ班で調べる必要がありそうだ。

 MPWは次期カローラ発売後、早ければ06年内にもリリースされるだろう。もちろん、その前にターゲットユーザーの反応を確かめるべく、事前クリニックでヒアリング調査も行われるはずだ。また、より多くの人に見てもらう目的で05年東京モーターショーに参考出品される可能性が高い。次期エスティマやRAV4と並んでトヨタ・ブースに賑わいをもたらし、若者の視線を引きつける1台として絶大な注目を集めるに違いない。
上半身のグリーンハウス低く見せて
超ワルなチョップド・スタイル演出

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サイドウインドウの上下幅が縮められるとともに、ルーフを厚く見せることでワルっぽさを強調。フロント同様、リアコンビランプも横一直線にデザインされて統一感がもたらされる。
幅広スポーティな次期カローラ

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04年12月号でスッパ抜いた次期カローラはセダンを除いて3ナンバーサイズに生まれ変わる。1.8リットル級エンジンが主力に据えられ、実質クラスアップが図られる。セダンのみ、5ナンバーサイズが維持される予定だ。

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bB
それまでのトヨタ・デザインでは考えられなかったほど、ワルなテイストを身につけて2000年に登場した。若年ユーザーを引きつける原動力にもなった。
ナディア

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オーパ

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トヨタが挑戦した2列シートMPW
セダン不振&RVブームに目をつけ、これまでにも2列シートのユニークなクルマは送り出されてきた。当時、RVを担当していた第3開発センターが初代イプサムをベースに、セダン・ライクな居住性を持たせた2BOXがナディアだった(98年デビュー)。さすがに3列シートのイプサムがベースに使われただけに、広大なラゲッジスペースと余裕ある後席居住性がウリに掲げられ、併せてセンターメーターや直噴エンジンもいち早く採用されるなど、力の入った1台だった。遅れて“ミニ・ハリアー”を思わせるSUV仕様も登場したが、販売面では元気のないまま廃止に。一方、2000年5月に投入されたオーパは、逆に乗用車を手がけていた第2開発センターがRVらしいセダンを目標に開発したクルマだった。セダン不振の影響を受けてコロナ・プレミオが振るわないなら、オーパにその座を継がせて“21世紀セダンのスタンダード”に位置づけようとの目論みもあったようだが、残念ながらオーパ自身も曖昧な位置づけがユーザーに理解されず、いまとなっては「シティ・パッケージ・ワゴン」と目先を変えたキャッチフレーズで細々と継続販売されている。
こんなデザインのクルマたちに似てる
初スクープしたカローラ派生車のデザインが何に似てるか――読者のみなさんが思い浮かべそうなクルマを集めてみた。レトロモダンの代表格とも言えるラパンはカローラ派生車と同じく、直方体を積み上げたフォルムが印象的。水平基調のウインドウとルーフラインに加え、ちょっぴり飛び出したリアノッチも似ている。ノッチつながりでは懐かしのコンセプトカー、ラオム(93年・第30回東京モーターショー出品)も見逃せない。また、実用性を最優先させた質実剛健なプロボックス/サクシードのシルエットも同類と言えるだろう。なかでもアイデアが酷似(?)しているのは04年東京オートサロンに出品されたラパンSSワークスか。こちらは実際にラパンをチョップドした改造車で、会場で開催されたカスタムカーコンテスト・コンパクトカー部門で最優秀賞を受賞した。
ラパン

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ラオム

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ミニ

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プロボックス

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コイツに酷似!? 『ラパンSSワークス』

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