30代を迎える若年層ねらう3ナンバー幅のエアロ仕様
セレナとステップワゴンが相ついでFMCを果たした一方、モデルライフ後半に入っているにもかかわらず、健闘しているノア/ヴォクシー。気になる世代交代は07年初夏に予定されており、あと1年ほどは現行モデルが継続販売される。おそらく夏のボーナス期や年末には特別仕様車がリリースされ、拡販に乗り出して販売台数が維持されるだろう。
一方、トヨタ社内では次期モデルの開発がすでにスタート。ミニバン系を得意とするトヨタ車体が中心となり、社内コード350Lが与えられて開発が進められている。かつて本誌では上に掲載したイラストとともに「ノアとヴォクシーでまったく異なる外観デザインが採用される可能性あり」と報じたが、その後、役員審査で両方ともボツになったという。結果、いま現在、検討されているデザイン案は左に大きく掲載したとおり、すごくキープコンセプトで変わり映えのしないもの。「現行モデルが成功しただけに、守りに入ったのが実状」と内部事情に詳しい関係者は話す。
しかし、セールスポイントがないワケじゃない。次期ノア/ヴォクシーの秘密はエンジンにある。現在トヨタのミドルサイズ直4エンジンは1.8リットルのZZ系と2リットル以上のAZ系で構成されているが、この2系統が統合されて誕生するのがZR系だ。いまのところ存在が判明しているのは1.6リットルの1ZR型、1.8リットルの2ZR型(新型カローラに搭載予定)、そして2リットルの3ZR型。この中でノア/ヴォクシーに搭載されるのは3ZR型だが、じつは同じ2リットルに2種類のユニットが存在する。
どういうことか? 3ZRには494Fと520Fのコードナンバーがあり、2機種が並行して開発されている。最大の違いはVVT(可変バルブタイミング機構)で、520Fには従来どおりのVVT‐iが備わる。対する494Fには新機構のPシステム(仮称)が盛り込まれる。PシステムとはVVTが無段階に変化する仕掛けで、似た機構としてBMWのバルブトロニックが挙げられる。このシステムが採用されることにより、燃費と加速時のパワーの両方が向上し、より理想的なエンジンへと近づく。燃費が20%も改善されるとの試算も社内で出ているという。
ただし、導入にあたって問題も残されている。もっとも開発陣を悩ませているのは、Pシステム搭載によってエンジンヘッドが大きくなってしまい、近年、注目が高まっている歩行者傷害が抑えられないこと。ヘッドが大きいためにボンネットフードとの間隔が狭くなり、歩行者がフード上に倒れ込んだ時のエネルギーが十分に吸収できないのだ。ノーズに厚みのあるノア/ヴォクシーでは回避できるものの、こうした理由から乗用セダンやコンパクトカーでの実用化はまだ難しそう。
さて、その新世代2リットルエンジンが搭載されるノア/ヴォクシーには引き続き標準車とエアロ仕様がラインナップされるが、後者はウィッシュやアイシスのスポーティ仕様と同じく、オーバーフェンダー装着によって3ナンバー化が図られる。上のイラストで再現したように、205/60R16タイヤを収めるためにもオーバーフェンダーは欠かせない。月販目標台数は標準車が6500台、3ナンバー幅のエアロ仕様が3500台で、合計1万台の販売が見込まれている。
さらにニュースは続く。モデルライフ途中には中身も3ナンバー仕様の上級モデルが登場。すなわち、2.4リットルエンジン搭載で動力性能に余裕を持たせたモデルもバリエーションに追加される。セレナとステップワゴンで盛り上がっているマーケットも、1年半後には勢力図が大きく変わっているに違いない。 |