トヨタでは年間100万台のハイブリッドカーの販売をひとつの目標としています」―6月27日、就任会見にのぞんだ渡辺捷昭新社長はスピーチでこう述べた。
初代プリウスがデビューしたのは97年10月のこと。当時は目新しさこそあったものの、ライバルメーカーは表面上、冷ややかな態度に終始した。実際は、量産にこぎ着けたトヨタの開発力に敬意を表したエンジニアも多かったが、欧州勢はハイブリッドカーをキワモノ扱いし、SUVが飛ぶように売れていた米国勢はM&Aにうつつを抜かした。
8年後の今日、ハイブリッドカーに追い風が吹いている。ハリウッドのセレブたちは競ってプリウスに乗るようになり、原油価格の高騰も重なった。その結果、トヨタは04年、アメリカだけで5万台以上のプリウスを販売。その自信が渡辺新社長の発言にもつながったようだ。
で、今後のハイブリッド戦略の中でキャッチしたのが、ここにスクープしたクルマだ。常勝トヨタにも販売不振のクルマはあり、最近ではオーパがモデル廃止となった。さらに「次はプログレ&ブレビスでは・・・」と、ささやかれている。と言うのも、捕らえたクルマが新型カローラ(06年8月デビュー予定)とMCプラットフォームを共有する代替車種に位置づけられているからだ。
ゼロ・クラウン以降に使用されているFRシャシーはレクサスISで縮められるが、さらなる短縮は難しいそうだ。ISを下回るサイズに仕立てるのがムリなこともあり、MCプラットフォームの起用が決まったとも言われている。
搭載されるエンジンは2AZ型2.4リットル直4+6速AT。これに前後2個の電気モーターが組み合わされる。この方式はハリアー&クルーガーHVで採用されているものと同じだ。単純なFFスポーティ4ドアを避けるのは根強いFR支持派を逃さないためだが、エントリーモデルとしてコンベンショナルな2.4リットルFF仕様も用意される模様。
スタイリングはまだ検討の域を出ないが、エッジの立ったシャープな印象が強い。とくに前後フェンダーは気流を切り裂くかのごとく切り立つ。全長4500mm×全幅1750mmのコンパクトな出で立ちはプログレ&ブレビスから引き継がれる長所だが、メッキパーツ多用のギラギラしたオヤジ臭さは一掃され、洗練されたスポーティ・テイストが全面に打ち出される。大きく傾斜したAピラーと三角窓はコンパクトカーでの採用例が多いものの、同クラスでは前例がないだけに引き立って見えるだろう。
一方のリアビューでも、トランクリッド後端にシャープなエッジが設けられる。開口線は垂直に設計され、使いやすそうな感じも受ける。この先、変更される可能性もあるが、コンビランプはトランクリッドにまたがるスクエア・デザインが考案されている。
じつはこのクルマ、トヨタ・ブランドから消滅するアルテッツァ後継車の役割も担っているという。こう考えれば、単なるセダンとは一線を画すシャープなスタイリングも理解できる。つまり、プログレ&ブレビス、そしてアルテッツァのスモールFRセダン3車をまとめてリストラし、ハイブリッド4WDサルーンへとユーザーを導く戦略なのだ。ちなみに、想定価格は280〜300万円で、カムリとほとんど変わらない。
コイツのスポーティ度合いを示すアイテムは他にもある。リアバンパー下部に注目してほしい。センター出しエキゾーストを包み込むようにレイアウトされる逆台形ディフューザーに気づくはずだ。単に広告コピー上の“スポーティ4ドア”でないことは、こうしたディテールからもうかがえる。
トヨタはハリアー&クルーガーHVでハイブリッド車の強力な動力性能をアピールすることに成功した。つまり、「エコカー=非力なクルマ」という既成概念を簡単に打ち破ってみせたのだ。モーターやバッテリーは日進月歩で高性能化が進みつつあり、セッティング次第では同クラスのガソリン車を寄せ付けないパフォーマンスも出せるようになりつつある。今回キャッチしたハイブリッド4ドアのデビューは07年頃が有力。ハイブリッドという環境技術がもたらす新次元の走りに、またまた多くのドライバーが魅了されるに違いない。 |