スクープ
2004年12月

 ファンカーゴ  トヨタ
ルーフはアルミ製または開閉式ガラスから選択可
 ファンカーゴの中折れ式バックドア 実現なるか

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実用化が検討されているファンカーゴの中折れ式バックドア。ボディ剛性確保と耐久性が最大の難関だが、もし実現すれば注目を集めるに違いない。外観から背高ノッポな印象が薄れているのも見逃せない。

 ファンカーゴはヴィッツ・ファミリーの中でも比較的おとなしめのクルマだ。「カーゴ」の名前が示すように、ユーティリティが重視されたデザインは万人受けが難しく、ユーザーを選ぶことは確かだ。しかし、05年7月にもデビューする新型モデル(開発コード110L)には数々の新機構が搭載され、一般ユーザーにも魅力たっぷりの1台となりそうだ。

 一番の注目点はバックドア。現在はボディに向かって左側から開く横開き設計だが、新型モデルでは中折れ式の採用が検討されているという。乗用車では極めて珍しい機構で、最近では02年の東京モーターショーに出品された日産のコンセプトカー、ビーラインに起用されていたのが記憶に新しい。

 ただ、現時点ではまだ検討中で、採否の結論が出されていないとか。中折れ式のメリットは言うまでもなく、狭い場所でも開閉しやすく、ドアが開くにつれて後ずさりする必要もないこと。ただ、先行試作車に組み付けられている実際の中折れ式ドアはキシミ音が激しいうえ、剛性の低さや生産性、雨漏りなどの品質面といったハードルが高いようで、「採用される確率は50%くらい」(開発関係者)との証言もある。

 もうひとつ、新型ファンカーゴにはラフェスタやプジョー307SWのような大きいガラスルーフも採用される見通しだ。ラフェスタや307のガラスは固定式だが、ファンカーゴでは前後2分割タイプが採用され、前半分がアウタースライドする仕組みになっている。このため、頭上に開放感が感じられるだけでなく、オープンエアドライブも楽しめるというワケだ。

 中折れ式バックドアと大型ガラスルーフはともにボディ剛性にとっては大きなマイナス要素。両アイテムが正式に採用されれば相当な重量増は避けられないが、近年の燃費志向を考えると、現行モデルより燃費が劣ることは許されない。このため、ガラスルーフ非装着車のルーフをアルミ仕立てとするなど、各部の軽量化も重視されている。

 一方のインテリアでは特徴的な床下格納式リアシートが改良され、現行モデルのように床面ボードを取り外す必要がなくなる。具体的には新型ヴィッツ同様、前倒し操作だけで床下に格納される。また、助手席にはクッション引き上げ式のダブルフォールディング機構を初採用。ボディボードのような長尺物も簡単に積み込め、「カーゴ」としての使い勝手が向上する。

 新型モデルは床面の低さもアピールポイントに含まれる。薄型燃料タンクが採用されるほか、本来ならリアシート下に設置されるサブマフラーが助手席下のデッドスペースに移され、低床化に貢献。ボディサイズは3900mm×1695mm×1650mm。見た目にはほとんどわからないが、数値上は全長が20mm長く、全高は50mm高い(全幅は±0)。なお、ヒップポイント高は610mmで、前後乗員間隔は925mmを確保。コンパクトなボディサイズながら、天井の高い空間をウォークスルーで行き来できる―低床化でファンカーゴ本来の魅力にいちだんと磨きがかかることは間違いない。

 ベースには新型ヴィッツが用いられるため、搭載エンジンも2SZ型1.3リットルと1NZ型1.5リットルの2機種に落ち着く。目新しい点では、1.5リットル2WD車にパドルシフト7速スポーツマチックCVTがおごられるのが見逃せない。

 現在、前半分がist、後ろ半分がbBという“ニコイチ”の先行試作がテストに使われている。確定ボディの正式な試作車は05年3月に完成する予定だ。7月の発表・発売を考えると、かなりタイトな開発スケジュールだが、基本コンポーネンツがヴィッツから流用されるため、試作や試走行の回数も少なくて済むのだろう。CAD/CAMをフル活用して仕上げる今日の新車開発からすれば、常識的なスケジュールだ。

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中折れ式バックドアといえば、02年東京モーターショーに参考出品された日産ビーラインにも採用されていた。
現行モデル

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「携帯空間」をキーワードに99年8月、ヴィッツ・ベースのマルチ・パーパス・ワゴンとして登場。


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