日本の道路では「自転車道」(道交法63条の3)が設けられてはいるものの、ほとんどないから、軽車両である自転車は、車道を走るのが原則。この事故の現場が自転車通行を許された歩道でなければ、法律上は違法行為となる。ただし、現状の日本では実際の道路事情からすれば自転車が歩道を走るのは無理もないことだ。次に幼児との二人乗りについても基本的には違法だが、都道府県の公安委員会は道路の危険を防止して交通の安全を図るために、軽車両の乗車人員について定めることができるとされており(道交法57条2項)、自転車については幼児用座席に幼児を乗せることを認めているケースがある。実際に幼児を乗せた走行自体を非難するのは実態にそぐわないだろう。
ただし、幼児同乗と歩道通行は大目に見たとしても、安全運転が守られていたか? 道交法は自転車に歩道通行を許す場合でも、歩道中央から車道寄りの部分を走り、かつ歩行者の通行を妨げそうな時は、一時停止しなければならないとしている。(道交法63条の4)。つまりこの事故では、やはり転倒した自転車の側に基本的な責任があると言わざるを得ないだろう。幼児を乗せている以上、母親はどんな時でも素早く足を付いて転倒防止を心がけなければならないし、歩行者との接触が懸念される場所では、自転車から降りて、押して歩くべきだ。母親がそうしなかったのが事故の根本的な原因である。歩行者を責めて責任転嫁してはいけない。
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