合言葉はダウンサイズ
(「世界共通」アメリカ人のひとりよがりの「グローバリゼーション」から脱却しようとした結果のひとつが次期フォーカスなのかもしれない。)
アメリカ合衆国の国土の実に3分の2が寒波(フロリダまでも)に見舞われているなか、厳寒のミシガン州デトロイトで1月11日より北米国際自動車ショー(通称:デトロイトショー)が始まった。全米の失業率がいまだに10%台ということもあり、市民の消費意欲はすっかり冷え込んでいるとのこと。とくに自動車産業が主要産業となるミシガン州では、地区の失業率は全米平均を上まわるとのこと。昨年にはアメリカ、いや世界最大の自動車メーカーが経営破たんしたりもしており、昨年の東京モーターショー並みに「お寒い」ものかと思えば、派手なニューモデルこそないものの、復活をかけたデトロイト3(ゼネラルモーターズ[以下GM、フォード、クライスラー]の意気込みを感じた。キーワードは「ダウンサイズ」。
プレスデー初日の、しかも朝一発目のフォードのプレスカンファレンスでお披露目されたのは、2012年型次期フォード・フォーカス。アメリカのみならず、中国、欧州など世界各地で生産されているフォーカスだが、いまは欧州、北米、中国など大規模仕向け地向けを中心に、名前だけ同じではっきりいってスペックは大きく異なっている。次期フォーカスはスペックを世界共通にして、さらに作りこんだというフォードのまさに意欲作となっている。同じ日に行われたGMのシボレー・ブランドのカンファレンスでも、今後の主力商品(全米)として、日本でいうリッターカーのシボレー・スパーク、現行モデルでもGMの世界戦略車と言っても過言ではなくなった、韓国GM大宇モデルベースのシボレー・アベオ。そして満を持していよいよ市販が発表された、GMのハイブリッド専用車ボルト。
一昨年のデトロイトショーでは、5.7ℓV8ガソリンエンジンを搭載するクライスラーのラージサイズピックアップ「ダッジ・ラム」のフルモデルチェンジが、そして昨年にはアメリカでの人気ミドルサイズピックアップ、フォードFシリーズピックアップが、ガソリンエンジンを4.6ℓV8から5.0ℓV8に乗せ換え、華々しくデビューした。ここ数年はとりせず「エコ的」な小型車をサイドディッシュ的に出すものの、デトロイト3のメインディッシュは屋内である会場で大排気量のV8エンジンを鳴り響かせて、派手に発表する大型車であった。しかし、今年のショーでは、会場に展示はされているものの、すっかり鳴りをひそめてしまった。従来のアメリカ車ファンにはさびしいかぎりだが…。
ただ、だからといって日本勢のハイブリッドがチヤホヤされているかと思えば大違い。前に紹介したフォード、GMともに発表したモデルは、既存のガソリンエンジン車。フォードなどは「クラフトマンシップを極めた」と、既存技術の造りこみを強調していた。
現在世界的に有望な自動車市場は、中国、ロシア、インドなどの新興国。残念ながらすぐに日本のように、ハイブリッドカーだ、電気自動車だというわけにはいかない。有望な新、興国でクルマを売りたいなら、既存のガソリンエンジンを造りこみ、燃費も良く、環境負荷もより低いものが売れるのは明らか。
一方で自動車を日本での自転車のように、日常の足にしているアメリカでは、「ハイブリッド車は高すぎる」とか、「1台のクルマにガソリンエンジンとモーターを積むのはそもそも無駄なのでは?」という疑問の声が日増しに高まっている。
そんなことを反映してか、トヨタがコンセプトカー、ホンダがCR-Zの市販モデルを発表したが、どこか視線が冷ややかだった。とくにCR-Zはフォルクスワーゲンと、アウディが飛びきりデザイン重視のハイブリッドスポーティカーを発表した後だったので、集まったプレスの反応もいまひとつの感じ。
欧州メーカーはもちろんのこと、デトロイト3までもが日系メーカー得意の小型車を重視しはじめた。しかも日本車お得意のハイテクデバイスを多数導入してきた。韓国メーカー車の基本性能も含めた性能向上もめざましい。そうなると差がつくのはクルマの基本性能ということになる。ショー初日を終え「ハイブリッドも大事だけど日系メーカーは、いまこそ基本を見つめ突き詰めておくべきでは?」という感想を正直もった。