編集部blog
[2008/7/15]
【連載24】元「Xスクープ班」記者の、スクープ秘話

9-2)「出禁」と「車貸禁」攻防戦

この話しを憶えていらっしゃる方は、相当のマガジンXエンスーである。
10年以上昔、本誌に「コンシューマーズ・テスト」という企画があった。専門誌として初めてクルマを水の中にダイビングさせて、脱出を試みたり、また火災を発生させたり、雷を落としたりもした。実車を原寸大のラジコンに仕立ててテストしたこともあり、この模様はテレビでも放送されたことを思いだす。
その名物企画の中で、「夏場のエンジン冷却性能試験」を行ったことがある。もちろん、最近のクルマの冷却性能はすばらしいということを、読者の皆さんに分かりやすく解説するにはどうしたらいいか。編集部は知恵を絞り、画期的な方法を思いついた。
それはラジエータ冷却水を使って、お風呂をわかすというもの。広報車のラジエータ・ホースを取り回して、風呂桶の水を温水で湧かして、ビキニ姿の可愛いモデル嬢に実際に入浴してもらったのだ。
これは受けた! 写真一発で、何が起きているのかわかる。下手な数値データを並べるより、よっぽどクルマの性能の良さをアピールできたと編集部は自負したものだ。ところが、メーカーはカチン! ときたらしい。「目的外使用」「事前届け出なし」との理由から、以後、これもかなり長い間にわたって、広報車を貸してもらえなかった。
もっとも、当時、自動車メーカーが新型車を貸し出す際の明確な規定は、あまりなかった。だから、公道走行用のクルマを無届け出で、サーキット走行させたりして、クルマを痛めるなんてこともしばしばだったのである。広報車を借り受けての事故は今でもなくならないが、運転中に死者が出るなどしたため、近年、メーカーサイドも貸借いずれか側で保険加入を義務づけるなど、貸し出し規定を厳しくしているようである。
なお、本シリーズのテーマではないので今回は書かないが「広報チューン」の話しもしたいと思っている。

【広報車】… 自動車のような高額商品を記事掲載するのに、雑誌編集部がすべて自前で用意することは、金銭的にはもちろん、時間的にも不可能である。そこで、メーカー側がマスコミの便宜を図って、新車を原則無料で貸し出している。ただし、台数には限りがあるから、先に借りていた媒体がクルマを壊したりすると、後の予定が狂って結構大変である。「試乗会」というイベントが生まれたのも、時間のない媒体サイドと一度にたくさんの媒体貸し出しニーズに対応できるという両者の利害が一致してのことだ。
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