スクープ
2003年 7月

タント ダイハツ
タイガース元気やと、ダイハツもやる気マンマンやねん
関西弁で「たくさん」を意味するタント発覚

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短いノーズ、切り立った四方のウインドウガラス、ダブルAピラーなど、タントの外観デザインはかなり個性的。プラットフォームはムーヴから流用され、コストが抑えられる。

 今年はとにかく関西が熱い! 何しろ、あの阪神タイガースが18年ぶりにリーグ優勝を果たしそうな勢いで猛進中。お膝元の関西が熱気にあふれるのもムリない話だ。その阪神タイガースのホームグラウンド、甲子園球場にリリーフカーを納入するなど、ダイハツは身近な地元企業として長年にわたって親近感をアピールしてきた。

 代表車種のミラとムーヴを丸4年で一新し、しばらくは大きなニュースもないと思われていたダイハツだが、さすがに阪神タイガースが活躍しているとなれば一緒に盛り上がろうと意気込んだのか、密かなる隠しダマを開発していることが判明した。その名は「タント」。関西および中部出身者ならピンとくるかもしれないが、タントとは方言で「たくさん」を意味する。では、なぜそんなネーミングに決まったのか、初めてキャッチした外観フォルムを見ながら理由を探っていこう。

 タントのボディ側面およびハッチゲートは垂直に近い切り立ったデザインに仕上げられ、ボクシーな雰囲気が強い。広いウインドウ面積が確保されることで居住性の良さが外観からもアピールされ、モビリオに似たデザイン手法が用いられている。また、ハッチゲートは上半分が完全にガラスで覆われ、サイドまでガラスが回り込むことでリアビュー全体がモダンに仕立てられる。ガラス下にはコンビランプが置かれるが、左右独立の角丸デザインに処理されており、ザッツが思い出される。つまり、タントはホンダがひと足先に用いたデザイン要素を巧みに取り込み、これまでのダイハツ車とは異なる目新しいイメージをかもし出す狙いで開発されているのだ。

 エクステリア最大の特徴はダブルAピラー。その名のとおり、Aピラーが2本設けられてキャビン前端が前方へ出され、先に述べた大きなウインドウグラフィックと相まって広大なキャビンが視覚的に訴求される。記憶に残っている読者もいるかもしれないが、このダブルAピラーは01年東京モーターショーに出品されたコンセプトカー「ミューズ」で提案されていた。2年の歳月を経て角丸デザインとともに実用化へと至ったワケだ。  今回の撮影で内装を捕らえることはできなかったが、インパネにはアナログ表示のセンターメーターが置かれ、燃料計などのデジタル・サブメーターも添えられる。運転席前方の空き部分はフタ付ボックスが設けられることでスペースの有効活用が図られる。ムーヴ同様、コラムシフトと足踏み式パーキングブレーキが採用され、サイドウォークスルーも可能だ。当然、全高の高さを生かしてヘッドルームもたっぷりと用意されており、ベージュ色の開放感あふれるカラーリングと相まって圧迫感のないキャビンスペースを確保。

 垂直ハッチゲートはバンパー上から上方向に大きく開き、使い勝手の良さがセールスポイントに掲げられる。また、限られた空間を少しでも活用すべく、スペアタイヤに代わってパンク修理キットが装備されるとの情報もある。

 パワートレーンやサスペンションはムーヴと共用。EF-VE型3気筒エンジンのほか、エアロパーツ装備のスポーティ・グレード用にEF-DET型ターボエンジンも用意されるが、JB-DET型4気筒ユニットがラインナップされるかどうかは微妙なところ。低燃費追求モデルとしてCVT搭載車が設定される可能性もある。

 くつろげる広いキャビン、シンプルで親しみやすい外観デザイン、そして使いやすいラゲッジスペース。軽自動車の概念を打ち破る広大な空間を持つからこそ、このクルマには「タント」なる車名が与えられることになったのだろう。独走を続ける阪神タイガースにあやかり、同じ関西発のダイハツにもますます活躍してほしいね。
すでに02年12月、ダイハツは「TANTO」の商標登録出願を行っている。

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極秘テストカーを世界初スクープ

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これがタントのテストカーだ。すでに20台以上が組み付けられ、役員評価や耐久テストなど、さまざまな目的に用いられている。大きなグリーンハウスと切り立ったリアエンドが確認できる。

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●ミューズ
01年東京モーターショーに参考出品されたコンセプトカー。タントのダブルAピラーや角丸デザインはミューズに由来している。
●はみ出し情報●
ダイハツが手がけている主なクルマの開発コードは以下のとおり。タント:D77、MPC(ストーリア後継車):D71、サブBコンパクト(トヨタ&PSAヨーロッパ専売車):D990。


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