スクープ
2004年 3月

エリシオン ホンダ
エリシオン 実車に触っちゃった

↑zoom
サテンシルバーMの迫力ボディ
5角形グリルとシャープなヘッドランプが印象的なエリシオンのフロントマスク。バンパー内エアインテークは逆台形を描き、両横にも小さな穴が開けられている。

 1カ月前の2月26日、本誌4月号と同時に書店に並んだ自動車雑誌各誌を見て、スクープ班はドキッとした。その存在を突き止め、独走スクープしてきたグランドワゴン(仮称)の市販版が正式車名エリシオンとともに一斉に掲載されていたからだ。全国ディーラーにティーザー資料が配布されれば、どこよりも早く手に入れられるだけの自信を持っていたのに、今回はどうしたことか、そういったティーザー資料が配布されたとの情報すら、締め切りの時点までは入手していなかった。よほどホンダが頑張って「情報発信」のタイミングを決めたのだろう。さすがだ。

 しかし、そんな理由で本誌読者だけがエリシオンの詳細に近づけないのは、スクープ班としても非常に残念。自動車雑誌購読者やクルマ好きなら平等にエリシオンのことを知る権利はあるはずだ。そこで、1カ月遅れになってしまうのを覚悟の上でスクープ班は動いた。当然、数ページのティーザー資料、他誌と同じ写真だけで満足するようなスクープ班ではない。そんなワケで、誰よりも早くエリシオンの実車に触っちゃいました。その模様がここに並べたナマ写真だ。

 03年東京モーターショーに参考出品されたコンセプトカー「ASM」がエリシオン・ベースだったことは言うまでもないが、改めて市販版を間近で眺めるとディテールが変更されているのがわかる。ヘッドランプはLEDの実用化がまだ難しいため、ディスチャージ式に変わっており、オプションでAFSも選べることが判明。また、ASMのラジエターグリルは3本の平たいルーバーで構成されていたが、市販版では上半分にシルバープレートが、下半分に細いルーバーが配される。上半分はボンネットフードに装着されているため、事実上グリルは上下に2分割されているワケだ。もし、この個性的なデザインが気に入らないなら、純正アクセサリーのモデューロ・グリルを選ぶのもひとつの手だ。

 リアビューでも同様にコンビランプがLEDからオーソドックスなバルブ式に変更されており、平成17年排ガス基準75%低減レベル達成を示す4ツ星ステッカーも発見。また、テールゲート下方のスムージング処理がそのまま継承されることもわかった。

 バンパー上から開く大きなテールゲートの内側には3列目シートが備わっているが、ライバル車と異なって6:4に分割されているのが興味深い。じつはエリシオンの3列目シートは2列目とともに左右別々でチップアップスライドするため、自由自在にアレンジできるのだ。シート下部にはテールゲート側からも座面チップアップとスライドが操作できるレバーを設置。ちなみに、アコードワゴンで初めて実用化されたパワーテールゲートもオプション設定される。

 ティアナに感化されたのか、インパネにはワイドな木目調パネルが装着されており、その中に空調ダクトとヒーターコントロールスイッチが置かれている。インパネシフト一体型のセンタークラスターではナビゲーション用のプログレッシブコマンダーを中央に配置。一見、ナビ画面が見当たらないが、メーターパネルから助手席側へと伸びているメーターバイザーの下に潜んでいるのだ。エンジンを始動するとメーターパネルとともに点灯し、8インチワイド画面には地図やエアコン情報、オーディオ情報などが表示される。なお、ナビ非装着車でもインパネやセンタークラスターのデザインは変わらず、画面用スペースには時計とオーディオ情報を表示。

 オーディオは廉価グレードを除き、全車にAM/FM電子チューナー付CDプレーヤー(30W×4chパワーアンプ内蔵)&6スピーカーが装備される。AUX端子を活用すれば手持ちのポータブルMDプレーヤーが使えるのもウレシイ。さらに、上級グレードにはプレミアム・サウンド・システム「アキュリーフ」もオプション設定。50W×5chパワーアンプが運転席下に別置きされるほか、助手席下にはサブウーファーも装備されてホームオーディオ並みの音質がもたらされる。

 搭載エンジンは2.4リットル直4と3リットルV6の2種類(ともにi・VTEC)。前者はオデッセイと同スペックの160ps/22.2kg−mだが、CVTではなく、5速ATが組み合わされる。そのため、10・15モード燃費もオデッセイの12.2km/リットルには及ばず、10.2km/リットルにとどまる。一方の3リットルエンジンはインスパイアから流用され、最高出力も同じ250psをマーク。さらに、エリシオンでは最大トルクが31.5kg−mに増強されている(インスパイアは30.2kg−m)のも見逃せないが、ハイオク仕様に変わっているため、サイフには優しくないかも。

 そんな大排気量3リットルエンジンで少しでも良好な燃費を実現すべく、可変シリンダーシステムが採用される。これは減速時やクルージング時など、負荷が少ない時に3気筒が休止する機構で、ライバル車にはないエリシオンだけの強みだ。気筒休止時はエンジン振動が大きいため、これを打ち消す狙いでアクティブコントロール・エンジンマウントも用いられる。また、こもり音を解消するためのアクティブノイズコントロールは、オーディオスピーカーから打ち消し音を発生させる機構で、かつて日産が実用化したこともあった。

 ボディカラーは今回キャッチした3色以外に、下記に掲載した6色も用意され、全9色から選べる。なかでも目を引くのがソリッドのミラノレッドで、これまでの3ナンバー大型ミニバンでは考えられなかった色だ。組み合わされる内装カラーはグレージュ(グレー)とキャメル(ベージュ)の2タイプ。

 国内ミニバン市場を開拓したものの、2代目オデッセイで守りに入りすぎて失速したり、ステップワゴンやストリームがライバル車の追撃に苦しんでいるホンダ。待望の3ナンバー大型ミニバンを投入することで、モビリオからエリシオンまでのミニバン・ラインナップがついに完成する。いよいよホンダ巻き返しの時が近づいてきたが、他メーカーのみなさんはいったい、どうする!?
各誌に事前資料が載るよう情報発信を管理したホンダはスゴイ

月刊自家用車04年4月号

CARトップ04年4月号

カーセンサー
04年3月18日号

くるま選び04年4月号

ベストカー04年3月26日号
2月下旬以降に発行された自動車雑誌各誌の誌面を飾ったエリシオンのスクープ記事

16インチアルミホイール
215/65R16タイヤとセットの16インチアルミホイールは中級グレード以下に装備。

17インチアルミホイール
上級モデルには215/60R17タイヤと17インチアルミホイールが標準装備される。
IHCC装着車専用グリル
IHCC(インテリジェント・ハイウェイ・クルーズ・コントロール)装着車にはミリ波レーダーが装備されるため、グリル中央には保護カバーが内蔵される。

↑zoom
大きなテールゲート開口部
ヘッドランプと似た薄型デザインがモチーフのコンビランプは横長基調で、同社のステップワゴンとは印象がまったく異なる。バンパー上から開くテールゲートは開口部もスクエアで使いやすそうだ。パワーテールゲートもオプション設定。

↑zoom
インパネ横断する木目調パネル
木目調パネルはインパネを横断するだけでなく、ステアリングとシフトレバーにも用いられてコックピット全体をトータル・コーディネート。インパネシフト、ステアリングスイッチも備わる。

↑zoom
可変シリンダーV6エンジン
3リットルV6エンジンにはインスパイアと同じユニットが採用され、負荷が少ない時には自動的に後方バンク3気筒が休止して燃費低減。平成17年排ガス基準75%低減レベル(4ツ星)も獲得。
シックなロイヤルルビーレッド
オデッセイやステップワゴンにも用意されている深みのあるロイヤルルビーレッドパール。適度に落ち着いた雰囲気が魅力的だ。 
便利な両側スライドドア
ステップワゴン開発でライバル車動向の読みが外れ、片側スライドドア採用によって苦戦を強いられたため、エリシオンでは当然、両側にスライドドアを設定。

↑zoom
威厳あるインディゴブルーPも発見
カタマリ感のあるインディゴブルーパールも見逃せない。明るい色と異なり、メッキパーツとのコントラストが鮮やかでインパクトも強い。
こんなボディカラーも選べる
捕獲した3色のほか、エリシオンにはブルーイッシュホワイトパール(新色)、メテオールシルバーM、デザートミストM、ミラノレッド、ディープグリーンパール、ナイトホークブラックパールの計9色がラインナップされる。
ブルーイッシュホワイトパール

↑zoom
メテオールシルバーM

↑zoom
デザートミストM

↑zoom
ミラノレッド

↑zoom
ディープグリーンパール

↑zoom
ナイトホークブラックパール

↑zoom
ショー出品車「ASM」

↑zoom

ライバル車のルーツは商用車
ディーラーマンが研修に用いるビデオではエスティマ、アルファード、エルグランドが比較対象に用いられているが、「いずれもルーツは商用車」と紹介されている。“ベース”ではなく、あくまでも“ルーツ”と表現しているが、この微妙なニュアンスが誤解を招くことなく、ディーラーマンにキチンと伝わるかな?


▲戻る