スクープ
2003年 4月

3by2(スリー・バイ・ツー) ホンダ
「3by2」ホンダ幅広ショートワゴンまもなくデザイン決定

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 ショートノーズとロングキャビン、そして鋭く切れ上がったヘッドランプが特徴的な「3by2」の最終デザイン案。審査を経て確定した後も、ラジエターグリルやバンパーなど、ディテールは変わる可能性がある。

 「6人乗り――この聞き慣れない乗用定員にピンと来ない読者も多いかもしれない。コラムシフトだった頃の古いタクシーや重厚長大なアメ車を思い浮かべたキミは、かなり“通”な読者だ。80年代以降、日本国内で売られた6人乗りといえば、2代目プレーリーや初代カローラ・スパシオが挙げられる。ともに2人掛け×3列のシート配列で、スパシオは国内でいち早く脱着式シートも採用。しかし、両車とも2人掛けシートの幅が狭く、窮屈な印象がマイナス・イメージとなって苦戦、いまでは存在しない。

 ならば、幅を広げて3人掛け×2列に変えてみてはどうか? そんな発想で98年末に生まれたのが日産ティーノだった。MrビーンをCMに用いてユニークさをアピールしたものの、国内ユーザーにはその魅力が伝わりきらず、ついに3月末で国内生産が打ち切られた。

 だが、「捨てる神あれば拾う神あり」。今度はホンダが3人掛けシート×2列の6人乗りモデル発売に乗り出す。5月号で報じたように、幅広ショートワゴンはホンダ社内で「3by2」(開発コードBZ)と呼ばれている。この愛称が“3人掛け×2列”のシート配列に由来しているのも既報のとおりだ。

 独走スクープ第2弾となる今回は内外装デザインを一挙公開。まだ若干の変更が行われる可能性もあるが、上に掲載した外観フォルムは確定版に限りなく近いものだとスクープ班では確信している。

 シビック5ドア(全長4285mm)より短い全長4250mmのボディは全幅1795mmを誇り、カタマリ感ある造型に仕上がる。ちなみに、現行アコードの全幅は1760mmだから、それ以上に幅が広い。一方、全高は最新のタワーパーキングにも入庫できる1595mmに定められる予定だ。

 では、具体的なディテールを洗い出してみよう。フロントノーズは厚みがあり、ワイド感を強調する薄型ラジエターグリルとツリ目ヘッドランプが置かれて精悍な表情を見せる。ノーズからAピラーへとつながる流麗なシルエットラインはフィットにも似ており、ユーティリティ性の高さを暗示するモノフォルムを織りなす。ウエストラインはやや高めに設定され、安定感を演出。そして、リアクォーターウインドウの後ろには丸みを帯びたボディ同色ピラーが配され、水平に近いルーフを力強く支えているようなイメージが作り出れる。こうして改めて眺めてみると、フィットの兄貴分を思わせるデザインに仕上がっているのがよくわかる。

 使い勝手の良さもフィットに引けを取らない。シビックからグローバル・コンパクト・プラットフォームが流用される「3by2」は、フロアトンネルのないフラットフロアを実現。床下収納式のリア3分割シートを持つ「3by2」では、シビック以上にその恩恵が受けられるはずだ。リアシートに脱着機構が装備される可能性も高い。

 同時に捕らえたインパネは外観と同じく、水平基調デザインがモチーフになっている。メーターパネルはドライバーの前方、オーソドックスな位置に置かれるものの、メーターバイザーと一体型のナビ画面、コンパクトにまとめられる空調パネル、そしてインパネシフトが個性をもたらしている。さらに、インパネ中央奥には時計やエアコン作動状況が表示されるインフォメーション・ディスプレイも設置。その手前には後席まで届く気流を生み出すワイドベンチレーションが見え、左右の吹出しダクトはスポーティな丸型にデザインされている。

 しかし、これらを差し置いてインパネでもっとも目を引くのが、中央を横断するフローティングパッドの存在だ。この部分はシートと同系色にまとめられ、乗員に「包まれ感」「安心感」を提供。場合によってはシートと同じ生地貼りになり、手触りの良いパッド入りとなるかもしれない。ちなみに、ワイドベンチレーションはワンダー・シビックで、フローティングパッドは最終型トゥデイで、それぞれ採用されたことのある独特のアイテムだ。

 搭載エンジンは熟成の域に達する2リットルi‐VTECをメインに、手頃な1.7リットルも設定される公算が高い。2リットルにはストリームMCモデル(10月デビュー予定)で実用化される直噴ユニットが用いられ、CVTとの組み合わせが低燃費を実現。「超-低排出ガス認定」も取得する見通しだ。なお、海外向けにはMTもラインナップされ、AT同様、インパネにシフトレバーが置かれる(シビック・タイプR風)。

 02年9月デビューのスパイクを皮切りに、エレメント、ホビオと、ホビーカーを立て続けに発表し、今回スクープした「3by2」、そしてフィット派生コンパクトワゴンをリリースすることで一気にホビーカー・ラインナップを拡充するホンダ。自分の趣味に合わせてユーザーがクルマを使いこせるホビーカーの投入で、若年ユーザーの囲い込みが本格化する。

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 5月号に掲載した予想イラストでは、社内呼称の由来にもなった“3人掛けシート×2列”のキャビンを再現した。

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 3分割リアシートはフィットと同じく、後席足元にスッポリと収まって広大なラゲッジスペースが生み出される。クッションはね上げ構造の採用は検討中だ。  「3by2」にはグローバル・コンパクト・プラットフォームが流用されるため、シビック同様、フロアトンネルのないフルフラットな床面がもたらされる。
乗員を優しく包み込んで安心感をもたらす
懐かしのフローティングパッド再登場

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 インパネ上面はフラットに仕上げられ、開放感が高められる。中央を横断するシート表皮と同系色のフローティングパッドや後席への気流を作り出すワイドベンチレーションは懐かしのホンダ車にも見られた装備だ。
フローティングパッド

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 93年1月デビューの2代目トゥデイに採用されたデザイン処理。実際にパッドが使われ、安心感と優しさが演出された。いま現在ではマーチが似たようなデザインを用いている。


激戦区ヨーロッパの強豪たち
 道路事情に恵まれたヨーロッパでは幅広ショートワゴンが各社から発売されている。前席に3人掛けシートを採用した6人乗りモデルこそ少ないものの、各車ともリアシートは取り外せて自由自在にアレンジできる。「3 by 2」が立ち向かっていく相手をまとめてチェックしておこう。
シトロエン クサラピカソ

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 8ライトキャビンが特徴的で、1.6リットル、1.8リットル、2リットルのガソリン・エンジンが設定されているほか、2リットルコモンレール式ディーゼルも選べる。2000年1月のデビュー以来、すでに70万台以上が生産されており、いまではスペインとブラジルに加えて中国でも生産されている。
ルノーセニック2

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 3月のジュネーヴショーでベールを脱いだ2代目セニック。ガラスハッチや前後スライド式センターコンソール、助手席シートバック・テーブルが新たに採用され、実用性が飛躍的に向上した。全長が230mm長い3列シート版も近々リリースされる予定だ。
フィアット・ムルティプラ

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 外観ではフロントウインドウ直下に置かれたヘッドランプ(ハイビーム)と大きなガラスエリアが目を引き、インテリアには3人掛けシート2列が備わる。今年からようやく日本への正規輸入も始まり、1.6リットル5速MTのワングレードが249万円で売り出されている。
VWトゥーラン

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 ゴルフVのシャシーが初めて使われた、いわば新世代ゴルフ兄弟の第1弾。1.6リットルガソリン、1.9リットル&2リットルディーゼルに加え、年末までに2リットルガソリン・エンジンもラインナップに加わる。シート配列は基本的に2列だが、オプションで格納可能な3列目シートを選ぶこともできる。
フォード・フォーカスC-MAX

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 フュージョン(デミオ級)とギャラクシーの間に位置するフォーカス・クラスの背高ワゴン。後席は3分割構造で、センターシートをラゲッジルームにスライドさせれば、両サイドのシートを車両中央寄りに設置してショルダールームを拡大することができる。年後半から現地販売開始。
トヨタ・カローラ ヴァーソ

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 現行カローラ・スパシオ(現地名カローラ・ヴァーソ)に代わり、11月にも立ち上がる現地専売モデル。新型ヴァーソは全幅が広げられて居住性アップが図られる。6人乗りの設定は微妙なところ。基本コンポーネンツはカローラから流用され、トルコで生産される。
日産アルメーラティーノ

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 「3 by 2」と同じ発想で98年12月に登場。曲線基調のインパネ・デザインや脱着可能な3分割リアシートが採用されたが、国内ではユーザーの理解が得られず、モデルライフ後半にはコスト削減を推進。ハイブリッド仕様も限定販売。国内向けは3月末で生産終了となった。


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