スクープ
2006年 1月

 マジックBOX  トヨタ
 不夜城でもユニボックスでもない。いや、ホンダじゃない。
 「ユニークなミニバン」作りに目覚めたのは世界のトヨタだ!
 こりゃまるで走る1Rマンション
予想発売時期:08年
●全長×全幅×全高:4000mm×1695mm×1780mm
●搭載エンジン:1.3リットル 直4、1.5リットル 直4

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ヴィッツ・ファミリーの中で最大の室内空間を誇るマジックBOX(仮称)はモビリオ・スパイクにも似たワルで道具感あふれるデザインを検討中。左右非対称ボディのため、運転席側にスライドドアはなく、のぞき窓のような横長ウインドウだけが備わる。

まだ先行開発プロジェクト 需要が見込めれば市販化へ
 初代オデッセイとステップワゴンで成功して以来、ホンダは絶えずモーターショーでユニークなミニバン像を披露してきた。前ページで紹介したように、DJブースをそのままクルマに仕立てたような不夜城やリビングルームをコンセプトにしたユニボックスなど、毎回ボクらをアッと言わせる出展物を見せてくれる。

 そんなおり、ユニークなモノボックスが開発されているとの情報を捕捉。「ユニークなモノボックスと言えば、そりゃ手がけてるのはホンダでしょ?」と半ば決めつけるように言いたくなる。  ところが、渦中のモノボックスはホンダではなく、あのトヨタが開発しているというからビックリ。かつてbBを登場させた時に良い意味合いで「トヨタらしくない」と言われた経緯があるように、これまたリリースした際には「らしくない」と言われそうなクルマなのだ。

 そのモノボックスとは、いったいどんな存在なのか。現時点で検討されているデザイン案をいち早く入手し、再現したのが下のイラストだ。確かにトヨタらしくない、ワルで存在感たっぷりの造型が与えられている。あえてノーズを厚く見せるグリルレスマスク、大きく前進したグリーンハウスを強調するAピラー下の三角窓、インテリアのプライバシーを完全に守るウインドウなしのクォーターパネルなどなど。どことなくモビリオ・スパイクを思わせる雰囲気だが、こちらのほうが割り切った印象が強い。ちなみに車名もまだ決まっていないため、ここでは便宜上「マジックBOX」と呼ぶ。

 初スクープしたマジックBOXは巨大に見えるかもしれないが、じつはヴィッツ・ファミリーの一員なのだ。同ファミリーの背高ミニバンと言えばファンカーゴ後継車のラクティスが思い浮かぶが、あちらは世代交代を機にコンセプトが「遊び」から「走り」へとシフト。もちろん高い実用性は保っているが、ファンカーゴの弱点でもあった「強すぎる実用的なイメージ」が払拭されている。そこでトヨタは、ラクティスとは路線が異なる“使える”モノボックスが必要と考えてマジックBOXの開発に着手しようとしている。

 「着手しようとしている」なんて遠回しな言い方をしたのは、まだ正式プロジェクトに昇格していないからだ。日欧マーケットをにらんだ“ちょヴィッツ”がそうであったように、マジックBOXもまだ先行開発プロジェクトの段階で、実際に商品化されることが決まっているワケではない。需要の有無がしっかりと確認されてから正式プロジェクトへと格上げされる。逆に、万一「こりゃダメだ。商品にならん」と判断された場合にはお蔵入りになる可能性もある。

 そのマジックBOXは外観デザインだけがウリではない。「走る1Rマンション」と呼びたくなるようなパッケージングと仕掛けが盛り込まれていることもキャッチした。

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移動(ドライブ)と滞在(ステイ)の両機能を兼ね備えたコンセプトカーで、01年東京モーターショーに参考出品された。車名は「デュアル・モード・トラベラー」を意味する。ボディサイズは4850mm×1825mm×2030mm。

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ホイールベースはシエンタ級の2700mm
だけど贅沢にも巨大空間にシートは2列だけ

マジックBOXのホイールベースはシエンタと同じ2700mmが想定されている。しかし、その長いキャビンの中に配されるシートは3列ではなく、オーソドックスな2列。十分すぎる居住空間がもたらされることはパッケージング図からもわかる。

取り回しやすいサイズに自転車も積める工夫とは
ヴィッツのシャシーを使って開発されているマジックBOXは全長4m前後で、ホイールベースは2700mmが想定されている。2700mmと言えば同じファミリーに属する極小3列シートミニバンのシエンタと同じ数値だ。「ならば、やっぱり室内には3列シートが配されるのか?」と思いきや、何とも贅沢なことに、その巨大なキャビンに配されるシートは2列のみ!

 パッケージングは上に示したとおり。真四角フォルムによって十分すぎるほどの空間が確保され、2列シートはそのド真ん中に置かれる。しかし、これだけなら驚きも何もない。ましてや「走る1Rマンション」なんてフレーズは全然マッチしてない。いったい、どこに秘密が隠されているのか。

 まずは左ページのアレンジ1をご覧いただこう。リアシートが前後にスライドすること自体、ミニバンであれば珍しくも何ともない。だが、マジックBOXはその長いキャビンスペースを生かすことでラゲッジスペース側までシートをスライドさせられる。いつも姿勢よく座っているダミー人形が優雅にくつろぎたくなる気分もわかるってモンだ。

 続いてアレンジ2。ヴィッツ・クラスのクルマなのに自転車がスッポリと収まる。これには前後シートのチップアップ機構が貢献。左右に分割されている後席のシートクッションをはね上げ、助手席も同様にチップアップさせて前方に追いやると前後方向に広いスペースが作り出せる。おまけにリアゲートは上下開き式で、下半分にはスロープまで備わるという。

 最後にアレンジ3。先に触れたアレンジ2ができてしまうのだから、当然その応用編として運転席側の前後シートも前方に格納できる。ステアリングが干渉しないようにコラムをはね上げ、シートをピッタリと格納すればキャンピングカー顔負けの広大なスペースが出現。テントなしでもオートキャンプが楽しめる。

 つまり、マジックBOXは乗って移動するだけでなく、モノを載せたり、室内で自分だけの時間を過ごすこともできる隠れ家的な存在だ。しかも取り回しに困らない最適サイズ。まさに世界初の「走る1Rマンション」でしょ?
Arange 1

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後方までスライドさせれば広〜いリビングに
広い室内空間を生かしてリアシートはラゲッジスペースまでロングスライドさせられる。このアレンジなら、リムジンを通り越して家のリビングルームでくつろいでいるような感覚が味わえるだろう。
Arange 2

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前方にチップアップさせれば自転車も積める
左右分割の前後シートにはチップアップ機構も備わっており、両方とも前方までスライドさせれば図のように自転車も積み込める。さらに、上下開きのテールゲートにはスロープも内蔵される計画あり!
Arange 3

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それとも、ぜ〜んぶ格納して寝ちゃう?
アレンジ2は助手席側だけを前方格納した例だが、ステアリングをはね上げて前後左右すべてのシートを格納することも可能だ。こうすれば車内でゴロ寝だってできちゃう。ダミー君もおくつろぎの様子(^^)
トヨタによるホンダ追撃の経緯

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シエンタVSモビリオ
ミニバン市場に矢継ぎ早に新型車を送り込んでいたホンダ。コンパクト・サイズのモビリオを見るやいなや、トヨタの役員が「ウチもあれと同じサイズのクルマを作ろう」と号令をかけて開発させたのがシエンタだ。モビリオとの違いを強調するために曲線フォルムおよび丸目マスクが用いられたが、一部トヨタ関係者の間では発売前から「売れないだろう」との声もあがっていた。
ゾーンVSオデッセイ
「低い全高のミニバンなんて…」と誰もが思ったのとは裏腹に、クリーンヒットとなった現行オデッセイ。放置されたままのイプサムを置き去りにしつつ“トヨタ版オデッセイ”ことゾーン(仮称)が開発されているのは公開前に本誌がスッパ抜いたとおり。モーターショーで披露されたように、オデッセイを強く意識して低く構えたルックスで07年にも発売される。

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ウィッシュVSストリーム
ヴィッツやマーチが属するコンパクトHB市場にロゴ後継車として01年に送り込まれたフィットは口コミで人気が広がり、02年の年間販売台数でカローラをトップの座から引きずり下ろした。この後、敵討ちと言わんばかりにトヨタは徹底的にホンダを追撃し始め、その口火を切ったのがストリームと同一サイズのボディで現れたウィッシュだ。案の定、ストリームが撃沈されてウィッシュが売れたのは記憶に新しい。
ノアVSステップワゴン
タウンエース/ライトエースは96年秋のFMCを機にノーズ付のFRミニバンに生まれ変わった。半年ほど早く登場し、すでに快走を始めていたステップワゴンと同じく、初代ノアにも縦長コンビランプが与えられたが、ナント上半分は光らないダミーだった。当時のトヨタがコスト削減を重要命題に掲げていたために電球が省かれたのか、ステップワゴンを見て急きょランプが上方に伸ばされたのか、その真相は明らかではない。

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イプサムVSオデッセイ
イプサムが登場したのは96年5月。大ヒットとなったオデッセイは94年秋に発売されて順調に販売台数を伸ばしていたが、イプサムもそれなりに実績を残した。しかし「5ナンバーサイズでは小さい。オデッセイと同じ土俵に上がろう」と開発陣が決意したのか、2代目イプサムは2.4リットルエンジン&3No.ボディを身につけ、オデッセイと真っ向からぶつかる存在へと変身。だが、2代目オデッセイともども苦戦したのは説明するまでもない。
はみ出し情報 その1
マジックBOXの外観デザインやコンセプトは01年東京モーターショーに参考出品された「DMT」に似ている。
はみ出し情報 その2
片側スライドドアなのか、マジックBOXのボディ右側にはプライバシーを守りつつ光を取り入れるために、 高窓のような細長いウインドウが設けられる(パッケージング図を参照)。
はみ出し情報 その3
マジックBOXは 1、モビリオ・スパイクの高い実用性、 2、不夜城のワルなデザイン、 3、ユニボックスのくつろげるインテリア空間、というホンダが提案してきた3つのアイデアを合体させた1台!?


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