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三菱自動車製車両の燃費試験における不正行為に係わる国土交通省への報告について

2016.6.20

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三菱自動車社製車両の燃費試験における不正行為に関し4月20日に国土交通省より受けた調査指示に対し、「過去に販売した車種に関する調査」と、本件全容に関する再発防止策についての報告書を、追加提出した。

 

過去に販売された車種に関し、新たに報告すべき不正行為が判明したことについて、深くお詫びするとともに、今後は速やかに再発防止に取り組んでいくという。

 

また、お客様やお取引先様はじめ多数の皆様に、多大なるご迷惑とご心配をおかけしておりますこと、改めてお詫び申し上げます。

 

1.過去に販売した車種に関する調査について

1) 調査対象

三菱自動車における文書保管期間が10年間であることから、調査可能な範囲は、過去に販売した車種のうち、2006年から2016年までの過去10年間の20車種に限られ、それらの車種について調査を行った。20車種の内訳は以下のとおり。

 

「①ミニカ、ミニカバン」、「②旧型eKワゴン(含むeKスポーツ(ターボチャージャー無し車))」、「③eKスポーツ(ターボチャージャー付車)」、「④トッポ」、「⑤パジェロミニ」、「⑥ミニキャブ、タウンボックス」、「⑦i (アイ)」、「⑧i-MiEV」、「⑨ミニキャブMiEV」、「⑩パジェロ」、「⑪アウトランダー(ガソリン車)」、「⑫アウトランダーPHEV」、「⑬デリカD:5」、「⑭旧型アウトランダー」、「⑮ランサーエボリューション」、「⑯ギャランフォルティス、ギャランフォルティス スポーツバック」、「⑰コルト、コルトプラス」、「⑱RVR」、「⑲ミラージュ」、「⑳トライトン」

 

2) 明らかになった不正の概要

現行販売車の不正については、前回報告したが、過去に販売した車種についても、以下のとおり、不正があった。

 

①走行抵抗の測定において、法規に定められたものと異なる当社独自の「高速惰行法」(1991年から使用)を、「④トッポ」、「⑫アウトランダーPHEV」、「⑲ミラージュ」を除く17車種で使用していた。

 

② 法規に定められた成績書(負荷設定記録)を作成する際、惰行時間(走行抵抗からプログラムで算出)、試験日、天候、気圧、温度等につき、事実と異なる記載を全20車種で行っいた。

 

③ 前回、現行「⑱RVR」について、走行抵抗を実測したデータを使用せず不正に操作された他車種のデータから机上計算されていた事をご報告している。現行「⑱RVR」に関しては11型のデータを基に机上計算していた。11型は、「⑯ギャランフォルティス、ギャランフォルティス スポーツバック」を基に机上計算していた。

 

④ 「⑯ギャランフォルティス、ギャランフォルティス スポーツバック」の一部類別は、燃費目標を達成するため、性能実験部で転がり抵抗を改ざんする不正を行っていた。

「⑭旧型アウトランダー」の一部類別、「⑰コルト、コルトプラス」の一部類別では、届出審査が不合格になることを避けるため、認証部で転がり抵抗を改ざんしており、計4車種で不正を行っていた。

 

⑤ 現行「⑩パジェロ」について、過去の測定データの中から、転がり抵抗と空気抵抗を別の車の値を恣意的に組み合わせて改ざんしていたと報告している。「⑩パジェロ」の現行販売車以外の類別や「⑰コルト、コルトプラス」の一部類別の2車種でも同様の改ざんを行っていた。③、④を合わせ、計5車種について改ざんを行っていたことになる

 

⑥ 現行「⑫アウトランダーPHEV」、「⑪アウトランダー(ガソリン車)」、「⑬デリカD:5」、「⑱RVR」、「⑩パジェロ」について、過去の試験結果などを基に机上計算を実施する不正があったと報告している。販売が終了した「①ミニカ、ミニカバン」、「②旧型eKワゴン(含むeKスポーツ(ターボチャージャー無し車))」、「④トッポ」、「⑥ミニキャブ、タウンボックス」、「⑦i (アイ)」、「⑭旧型アウトランダー」、「⑮ランサーエボリューション」、「⑯ギャランフォルティス、ギャランフォルティス スポーツバック」、「⑰コルト、コルトプラス」でも同様の不正が行なわれており、合計14車種で行われていた。

 

3) 走行抵抗の不正の原因

前回報告した内容と同様の原因が見られました。具体的には、次の通り。

 

  1. 一連の作業は、担当者が長期に亘って固定した部署の中で行われ、法規に適合した作業となっているかの外部からのチェックができていなかった。
  2. 燃費目標の設定と達成を担う開発プロジェクトマネージャー(開発PM)は、性能実験部が走行抵抗を測定するための試験車両、試験日程を十分に確保できていない現場の実態を看過していました。さらに、開発PMは燃費目標の達成見通しの把握も怠り、改ざんを防止できなかった。

また、各車種のプロジェクトの総取り纏めを担うプロダクト・エクゼクティブ(PX)は、実態に則したリソースの確保ができておらず、経営陣に適切なフィードバックをしていなかった。

 

その他、次のような原因が見られた。

3.走行抵抗の試験結果にはばらつき(不規則な分布)があることから、開発の現場では、机上計算の方がより技術的に妥当で使用しても問題ないと思い込み、机上計算を半ば習慣的に行っていた。法令および社内ルール遵守の意識が不足していた。

 

4.経営陣は、開発現場の業務状況をPX、開発PMを通じて報告させる体制を構築していたが、十分に機能していなかった。

2009年からのエコカー減税への対応が社内決定され、それを受けて各車種の燃費目標が設定された。その結果、試験項目が増大するなど、開発現場の業務負担が増加したが、この状況が経営陣と開発現場間で正しく共有されておらず、人員配置や試験車確保などの開発部門のマネジメントが十分にできていなかった。この状況下で、燃費目標を達成することが開発現場でのプレッシャーとなり、結果的に燃費目標の改ざんなど不正行為に追いやる原因となった。

 

4) 燃費値等への影響

走行抵抗の改ざんが行われた「パジェロ」、「旧型アウトランダー」、「ギャランフォルティス、ギャランフォルティス スポーツバック」、「コルト、コルトプラス」、「RVR」の5車種の該当類別については、旧年式車であったり、生産を終了したりしており、中古車による実車測定も行っているが、正確な燃費値は確認することができない状態。しかしながら、改ざんの事実を真摯に受け止め、該当車両をご使用のユーザーに対し、誠実な対応をするという。

 

2.再発防止策

三菱自動車がこれまで実施した調査結果を踏まえて再発防止策を以下のようにとりまとめた。

 

なお、本事案全容解明の為に4月25日に設置した外部有識者のみによる特別調査委員会からの報告は、7月末を目処に受領を予定している。三菱自動車は独自調査の結果に基づき可能な限りの対応策を取り纏めたが、同報告に基づき追加的な施策実行が必要となった場合には、速やかに対応していく所存だという。

 

1) 今回不正内容とその背景に関する認識

今回不正の内容は、

① 法令で定められた「惰行法」と異なる方法で走行抵抗を測定したこと、

② 法令で定められた成績書に事実と異なる記載をしたこと、

③ 走行抵抗値のデータを改ざんしたこと、

  1. 過去の試験結果などを基に走行抵抗値を机上計算したこと、

 

であり、不正が起こった部署は夫々①性能実験部/三菱自動車エンジニアリング(株)(以下MAE)車両性能実験部、②認証部、③性能実験部/MAE車両性能実験部/認証部、④性能実験部/MAE車両性能実験部/認証部だった。

 

これらの要因・背景には、試験車両・試験日程が限られているという条件下で、

  • 本来の職制規定と異なる目標燃費達成の義務を負わせたこと(性能実験部)、
  • 走行抵抗の設定過程を客観的に検証する牽制機能がなかったこと(認証部)、
  • 親子会社間で所謂「ものが言えない」主従関係があったこと(MAE)、

という経営組織上の構造的問題があったものと判断。

 

更には上述のとおり、経営陣は、開発現場の業務状況をPX、開発PMを通じて報告させる体制を構築していたが、十分に機能していなかった。

 

また、人事ローテーションの観点からは、人材の特定部署への固定化(長期化)による当該個人依存(任せきり)の状況が、今回の不正を見逃す結果に直結したものと判断している。

 

2) 再発防止策の詳細

 

遵法意識の欠如や恣意的なデータ改ざんは、技術者としてあるまじき行為であり、徹底した意識改革が必要。その為には技術者に対する教育の充実/強化が必要。さらに、1.の3)および2.の1)に記載の原因、要因・背景を踏まえ、不正を起こさせない体制整備をはじめとする予防策の詳細について以下の通り報告している。

 

(1)燃費届出適正化のための施策

職制規定上と異なる目標燃費設定の義務を性能実験部に負わせたPX及び開発PM、今回不正事案に関係した性能実験部及びMAE管理職をその職位からはずした(5月10日)。

走行抵抗の設定過程を明確にするため、燃費に関する報告書への走行抵抗並びに実測場所・日時、測定条件記載を必須化した(5月15日)。

 

走行抵抗の設定を客観的に行うため、走行抵抗測定業務を、性能実験部から車両実験部に移管した。この結果、車両実験部は車両の燃費測定諸元確定の為の走行抵抗を客観的に測定する業務を担当し、性能実験部は、車両の性能・燃費・排ガス・ドライバビリティ開発試験及びドライブトレイン制御の開発試験に専念することになる(6月1日~)。

燃費開発に関する目標設定と達成は、本来職制で規定された商品開発プロジェクトで行うこととする(7月1日~)。

認証部を開発本部外(品質統括本部等)へ移管させ、同部の役割・機能を開発業務から分離(10月1日)。

車種開発における技術仕様の内容と試験日程、試験車台数の整合性を検証するプロセスに走行抵抗の測定、排ガス・燃費試験の日程、試験車台数の検証を追加(6月1日~)。

人的作為要因を極力排除するため、走行抵抗測定から燃費測定までのデータ処理の自動化システムを導入(12月1日~)。

開発本部内の試験業務については、結果を試験報告書に纏めることを徹底。また、報告書は確実に共有データベースに格納することを厳格に励行。その実施状況を自主監査することをルール化すると共に職制による日常チェックを行い、定期的に監査本部がチェック(7月~)。

開発部門に対する監査機能強化については、現在品質情報処理の監査目的で岡崎に常駐している品質監査部8名と品質統括本部品質監理部、技術検証部の連携により開発部門の届出・審査業務をチェックできる体制を確立(常駐監査要員の増員を含みます)(9月~)。

開発部門が係わる国内外の法規の内容・順守状況の総点検を実施すると共にこれらに準拠した業務標準の内容についても総点検を行う(7月~9月)。

開発部門が係わる国内外の法規及び当社知財情報の一元管理と同モニタリング及び部門内教育推進を実行する法規情報管理部署を新設(8月~)。

上記⑦に加え、IT化の促進により、測定等プロセス業務の証跡確保・自動保管・人為ミス削減を図る(7月~)。

当社における車両開発から発売後の品質確認までの過程をそのステージ毎に管理・運営して推進するシステムであるMMDS(Mitsubishi Motors Development System)の運用方法を見直す(各判定項目において、目標設定と達成の責任者を関係者間で合意の上取り進めると共に、ターゲットの達成状態を客観的に検証する方法を予め確認・設定の上取り進める、また、目標を変更した場合はゲートチェックをやり直す工数を確認する等)(9月~10月)。

 

(2)再発防止体制構築推進組織(仮称:事業構造改革室)の設置

前項記載施策は多岐に亘りますが、当該施策の着実な実行とフォローアップを行うべく、開発部門内に本社コーポレート部門員の派遣も含めた再発防止体制構築推進組織を設置(7月1日)。

 

同組織の活動を通じて、開発部門の透明性確保、恣意性の排除、自浄・主体意識の向上、検証体制の強化について確りとモニタリングしていく。

 

(3)人事・コンプライアンス関連施策

構造改革における最も重要な要素は、その主体者となる経営幹部・社員の自覚・自浄意識向上にあり、その為に、人事・コンプライアンスを連携させた以下の施策を実施(以下期日の記載がない項目については、前掲推進組織で工程表を7月中に策定の上、随時推進していく)。

開発部門に求められる人材像(開発ノウハウだけではなく、持つべき意識・取るべき言動、コンプライアンス遵守、マネジメント能力、各階層における責任範囲、報告・連絡・相談、情報共有・発信の重要性など)の再確認を開発部門の管理職全員で行い、共通認識を醸成。

この認識に基づき、キャリア開発・育成プランも加味した人事異動計画を部門・本部・部として策定し、部門内及び部門間ローテーションを着実に実行することで蛸壺化の回避を図る。

 

特に人事ローテーションの膠着化は、今回不正を見逃すこととなった大きな要因でもあり、経営として特段の注意を払った上で、開発部門はもとよりグループ会社幹部人事を含めた全社レベルでの厳格な運用を行っていくこととする。

 

人事評価において、上記人材像の実践状況を重要な査定項目とする。

上記①~③実施状況の確認とレビューを、部門として一元フォローする部署を定め、PDCAを廻せる仕組とする。

前項⑩に記載した法規情報管理部署を事務局として技術者向け法規教育の徹底を図る。

今回の「失敗から学ぶ」べく、本事案を具体例として盛り込んだ教育プログラムを策定し、開発部門全社員に対する研修を実施。

PXの役割は極めて重要であり、PMを適切に監督しつつ開発プロセスの全ての課題を掌握・推進し、その進捗状況を正しく経営陣にフィードバックする責務がある。今回発生した不正防止の観点からも、PXに求められる資質・要件を再定義の上、適切な抜擢・選抜・育成プロセスを確立。

 

(4)MAEのあり方見直し

MAEの当社への統合も視野に入れた最適な関係再構築を検討。

 

まずはMAEへの委託業務の依頼・進捗管理・検収要領について見直(7月末)。さらに、親子会社間の構造的問題に加え、当社とMAEに分散されている開発部門の現体制を抜本的に改善するためにMAEと当社を一体化させる事で透明性確保と風通しのよい組織を実現。

 

(5)経営レベルでのフォローアップ体制強化

冒頭に述べました本社経営と開発現場の情報ギャップを埋めるべく、上記開発部門の再発防止策に加え、本社経営陣が状況をタイムリーに把握し、確実にグリップを効かせて上記施策の着実な履行を担保する為に、以下を実行。

 

本社経営陣による開発部門の定期的な実情把握の励行

開発案件の進捗確認、並びに課題の認識、更にそれへの対応策確認の為の本社経営陣と開発部門幹部間での確認会を四半期毎に実施。

開発部門のリソース制約を十分認識した上で、適切且つ現実的な商品戦略、開発計画を策定(集中と選択)。

 

以上が現時点での実施済及び実施予定の再発予防策の全貌。

 

三菱自動車は2000年、2004年の品質問題を機に、「コンプライアンス第一」、「お客様第一」、「安全第一」を掲げ、2012年の品質問題においては「カスタマーファースト・プログラム」を設定し、品質問題の再発防止のため各種改革に取り組んできたが、今回再びこのような不正が起きたことを大変深刻に受け止めているそうだ。

 

5月18日付プレスリリースにおいて、「経営陣の直接の指示はなく、開発プロセスを適正に管理する体制を構築していたが、業務実態を十分に把握出来ていなかった」、「経営陣の開発日程短縮や高い燃費目標を期待する発言が不正を生む環境を作ったと思われる」と記したことが改めて確認された。

 

経営と開発部門現場の情報共有が出来なかったことに加えて、遵法意識の不足、「ものが言えない」組織風土、人材の特定部署への長期固定化などの複合要因によって不正が起こったという事実を経営陣として重大且つ真摯に受けとめているそうだ。

 

これらを踏まえ、今回発表致しました各種施策を着実に実行していくとともに、開発部門の業務プロセス可視化および部長職の意識改革を早急に行うべく、経営陣自らが外部人材を含めたチームを作り、直接対話等を行うことで、開発部門の閉鎖的な組織に風穴を開け、自浄作用を取り戻したいそうだ。

 

二度とこのような不正事案が発生せぬよう、社を挙げて万全の体制確立に取り組んでいくそうだ。

 

 


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